国内女子ツアー

“コロナ禍”のプレーヤーズ委員長・青木瀬令奈「先輩を見ながら少しずつ学んで」

2022/04/19 15:08
プレーヤーズ委員長として2シーズン目を迎えた青木瀬令奈

「最初は何をやれば良いか分からなかった」-。2020年、新型コロナの影響で大会の中止が相次ぎ、2021年と1シーズンに統合される異例の1期目を乗り越え、今季で就任2シーズン目を迎えた青木瀬令奈。29歳はどんな思いで向き合っているのか。これまでとこれからを聞いた。

◆あっという間の一年

女子ツアーには選手会がなく、その代わりの役割を担うのが「プレーヤーズ委員会」だ。青木は委員長として10人前後のメンバーで構成された委員会をまとめる。

ツアーの“舵取り役”ともいえる委員長就任のきっかけは、前任の有村智恵から声をかけられたことだった。「2019年の夏ごろにお声がけいただきました。プレーヤーズ委員長はシード選手でなければいけないという決まりがあって、そのときはシード確定していなかったので『考えておきます』とお返事したのですが、シードが決まったタイミングで決心しました」

2020年に委員長に就任した青木は、歴代の委員長の誰もが経験したことのない状況にいきなり直面した。「シーズン開幕前に新型コロナが拡大して、試合がなかなか開催できない状況が続きました」

「最初は何をやれば良いか分からなかったです」。そんな状況下にあっても、就任1年目の委員長は職責を全うしようと前を向いた。「委員会のスローガンを決めたり、委員会で発案したグッズを作ったり、ファンサービスの一環で缶バッジやフラッグを作ってアテスト場所で選手がサインして配ったりしました」。コロナ禍でのツアー運営という、誰も経験したことがない課題に全力で取り組んだ。「事前に聞いていた業務内容と違うものも多く、事前に教わったことがまったく通用しないくらいイレギュラーで、慌ただしく一年が過ぎました」

◆ゴルフの注目度を実感

仲間からの祝福

そんな苦労のなかでも、1人のゴルファーとしてうれしく感じることもあったという。「ゴルフ場や練習場に行ったときに、すごく混むようになったなと感じました。ゴルフ場の予約が取りづらくなってきたり、中古クラブのショップから在庫が少なくなっているというような話も聞きます。そういうところからも、ゴルフが人気になってきていると感じます」。コロナ禍をきっかけとした“ゴルフブーム”を、身をもって感じた。

「特に、黄金世代をはじめとする若い世代をいろんなところで取り上げていただいて、女子プロゴルフへの注目度が高くなってきていると感じています。そういったこともあってゴルフ人口も増えてきているし、若者のゴルフ人気にもつながっているんだと思います。どの選手を見ても面白いという状況はなかなかないチャンス。みんなが頑張っているというのは一選手としてもうれしいことです」。若い世代の台頭をただ見守っているだけではない。2021年6月の「宮里藍サントリーレディス」では4年ぶりとなるツアー2勝目を挙げ、存在感も示した。

◆次世代に伝えたい

経験があるから強い

女子ツアーの人気が高まり盛り上がる一方で、こんな側面もある。「この2年間はコロナで集合型のセミナーができなくて、前夜祭やプロアマ戦でのお客様との会話や立ち振る舞いの指導が抜けてしまっていることもありました。一昔前だとお尻をひっぱたいてでも教えてくれる先輩もいてくださいましたけど、今はなかなか難しいので(笑)。なので、そういった立場に私たちの世代がならなきゃいけない。今までの“古き良き”を若い世代に伝えつつ、新しい時代にも柔軟に対応しなければいけないと感じています」。プレー以外の部分、プロとしての立ち居振る舞いを若手に指導することは、委員会の仕事のひとつでもある。

今年、29歳となり、ツアーを引っ張っていく、若手を指導する立場となった今だからこそ分かったこともある。「いまのゴルフ人気もずっとは続かないと思っているので、この流れにおごらず、基礎的な振る舞いの勉強や努力も必要だと思っています。20代前半の時はゴルフだけ一生懸命やっていれば良いかなと思うけど、年齢を重ねるにつれて身につけておいた方がいい事もたくさんあると思うので。そういったことも先輩を見ながら少しずつ学んでいってほしいです。注目度が高いがゆえに、ですね」。視線を真っすぐに向けて話すその表情に、委員長としての責任感の強さが垣間見えた。(編集部・内山孝志朗)

■ 内山孝志朗(うちやまこうしろう) プロフィール

1995年、東京都生まれ。2018年に新卒でGDOに入社し、CS、ゴルフ場予約事業、練習場事業を経て編集部へ。学生時代は某男子プロゴルファーの試合を見るためだけに海外に行き、観光せずにゴルフ場とホテル間をひたすら往復していた。訪れた町を散策することが出張時の楽しみ。