ゴルフもやってます!ツアー選手権で味わえるB-1グランプリ
まちおこしイベントとして近年定着している「B-1グランプリ」。全国津々浦々の地域料理を味わえる催しが、今週の「日本ツアー選手権 森ビル杯」の週末に“会場内”で行われている。茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブで開催中の国内男子メジャー。ギャラリー用の食事エリアで出品されているのは福島県浪江町発「なみえ焼きそば」、山梨県の「甲府鳥もつ煮」、「西伊豆しおかつうどん」、そしてコースのある笠間市の「笠間いなり寿司」の4品だ。
場内の出店が充実している味自慢のトーナメントは、男女を問わず国内ツアーに数多い。それぞれに地元色があれば、ゴルフ観戦以外の楽しみもあるというもの。ただ、大会が2016年に打ち出した独自色は、少々毛色が違う。
日本ツアー選手権は今年、ギャラリーの入場口の場所を変えた。昨年までは会場のすぐ外にあったが、今大会はギャラリープラザ(食品&物販エリア)と観戦コースとの間にゲートがある(売店は選手がプレーするホール脇にもある)。つまり、入場券がなくても、食事をしたり、お土産を買ったり、ゴルフ用品を買えたりする。試合を生中継するNHKの大型モニターもあるので、解説付きの映像で複数の選手の動きを見るならコチラがおすすめだ。入場券はいわゆる紙のチケットではなく、リストバンドタイプになり、再入場がカンタンになった。
大会はこういったエリアの一角で、笠間観光協会との協力により、郷土のPRイベント「グリーンフェスタかさま」を開催。昨年までは土曜日のラウンド終了後に行っていたが、今年は週末2日間の日中に拡大して実施。「B-1グランプリ」はメーンのひとつで、4日には「動物戦隊ジュウオウジャーショー」「タチヒアン&ハワイアンフラ」など、およそゴルフとは関係のないショーも披露された。これらは宍戸ヒルズカントリークラブの敷地内で開かれているものの、ゴルフコースに入らなくても、誰でも楽しめる仕組みだ。
茨城県での開催とはいえ、東京都内からのアクセス面で必ずしも優れているとはいえないJGTOの主催試合。直近2年のギャラリー数は4日間合計約1万5000人で推移している。そのうち約35%を占める65歳以上の来場者については入場無料(高校生以下は例年通り無料)にした。その傍らで、コース外でのイベント充実を図るため、コンサートのほか、フジロックやサマーソニックなどの“フェス”をバックアップするイベント会社に協力を願い出て、施策に打った。
ツアーのスタッフは「男子選手たちのプレーをたくさんの方に見ていただきたい。そのためには動機はどうあれ、まずはゴルフ場に足を運んでいただくことが大切だと思います」。海の向こう、米国男子ツアーの巨大トーナメントは確かに日本ツアーとの集客力は比べものにならない。昨年度の国内男子ツアーの来場者数は全試合で計33万6427人だった。米国には1週間で延べ60万人以上集める試合もある。けれども、その何十万人もの来場者がみんなゴルフファンかどうかは疑わしい。
朝から酒をかっくらい、ゴルフとは無縁な話に花を咲かせ、思い思いに時間を過ごす。TPCスコッツデールの16番、TPCソーグラスの17番…米ツアーで数ある名物ホールを包むのは、息をのむ緊張感ばかりではない。「ナイストゥーミチュー」の声がやまず、握手とハグが絶え間ない。若い男女は互いの出方をうかがい、ゴルフ場を出た後の行動に頭を悩ませる。タイガー・ウッズがいくつで回ろうが、知ったこっちゃない。彼らにとってゴルフトーナメントは社交の場であり、出会いの場。年に1度のお祭り、地元のフェスティバルだ。
文化や習慣の違いを無視して海外と一緒くたにはできないが、日本の男子ツアー再興に向けた方法のひとつは、「ゴルフ観戦は、ゴルフを観るもの」「ゴルフ観戦は、ゴルファーのもの」といった“日本人のマジメさ”に疑問を投げかけることだと思う。
宍戸ではあす5日も、B-1グランプリ出品のメニューが味わえます。「100ydのいなり寿司を巻く」というカオスなイベントもあります。午前中の雨がやや心配ですが、外で飲むビールは最高です。ついでに隣で、プロゴルフのデカい試合もやってます。(茨城県笠間市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw