不満と証明のルーキーイヤー 今平周吾に続々と愛の手?
「レッスン代、払え」。谷口徹はラウンド中、例によってイタズラっぽく年下のプロに突っ込んでいた。「ダンロップフェニックストーナメント」3日目。「66」をマークして通算8アンダーの4位に浮上した今平周吾は、つい最近、この口まめなベテランに大きな“借り”を作っていた。
パッティングに悩んでいた今平のもとに谷口が歩み寄ったのは前週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」の練習日のこと。ヘッドがアッパーブローに入り、肝心な場面で引っかける悪癖を持っていた23歳は、パッティンググリーンで、およそ二回り年上の先輩から、とっておきの練習法を伝授された。
ボールのすぐ手前にティペグを深く挿し込み、ストロークを繰り返す。ダウンブローに打たなければ、ヘッドは地面から5mmほど頭を出させたティに当たってしまう。付きっ切りでおよそ2時間。昨季下部ツアーで賞金王に輝いた、売出し中の若手の感性は瑞々しい。その効果は、さっそく今週のビッグトーナメントで発揮された。「ショットはよくなかったが、長いバーディパットが良く入った」と言葉に実感がこもる。
シーズン前半戦は優勝争いの輪にも加わり、2度トップ5に入りながら、念願の初タイトルには遠い後半戦を過ごしてきた。「シーズンを通した体調の持っていき方なんかが、すごく大変。体にとにかく疲れがたまっていた」
そんな彼を見かねてか、今週は藤田寛之や宮本勝昌をサポートする、太田敦トレーナーがマッサージを申し出てくれた。体のケアに関してはこれまで、パーソナルトレーナーもつけず、たまに街の店舗に足を運ぶ程度でやってきた。「朝30分、ラウンド後に40~50分やってもらっている。体が全然違う…」。
飛距離は出るが、身長165cmと見た目も幼く、語り口もおとなしい。だがわずかな期間で残したトップツアーでの実力の証が、着実に多くの人々の目を惹きつけている。(宮崎県宮崎市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw