プロゴルフ界初の医学博士へ 横田真一の2足のわらじ
42歳のベテラン横田真一が、国内男子ツアー「カシオワールドオープンゴルフトーナメント」の初日に6アンダーをマークして、今平周吾、パク・サンヒョン(韓国)と並び首位タイとなった。
ツアー通算2勝、2005年から2年間選手会長を務めるなど、ツアーでも人気の選手だが、今季はこれまで4試合しか出場できず、賞金ランキングは144位と低迷している。「今日は自分らしいゴルフじゃないゴルフでした(笑)」。最終9番では13mのバーディパットを決めて満面の笑みでクラブハウスに戻ってきた。
横田は廣戸聡一氏とゴルフスイングを4つのタイプに分類する「4スタンス理論」の研究を行っている。2009年には「もっと知識を深めようと思って」と医学の勉強も始めた。「それからハマったのが交感神経と副交感神経についてですね」。自ら試合前に数値を図り、バランスがどういう状態に良い結果が残せるかを計測し始めた。
「この神経の研究があったからこそ、キヤノンでの優勝があったんです」。2度目のシード権喪失で苦戦していた10年に「キヤノンオープン」で優勝を果たしたが、その後は結果が残せていない。「昨年までの8年間でトップ10入りが2試合しかない。このままでは、ゴルフだけでは食っていけない」と、順天堂大学の小林弘幸教授の薦めもあって、博士号を取得する決意をした。
現在は同大学の修士課程2年目。「来週から大事なファイナルQTがあるんですけど、今はゴルフをまともに出来る状況ではないんです。先週は1度も練習をしていないし、今週は月曜日と水曜日にプロアマに出られたので、火曜日はホテルの部屋にこもって論文作成をしていました」。来月15日には、博士課程に進むための論文を提出しなければならないという。
「プロゴルファーで博士になった人はいますが、医学博士はまだいないでしょ。今回、無事に博士課程に進めたら、最低3年で取得できる。東京五輪までに資格を取れば、なにか仕事が来るんじゃないかな(笑)」
プロゴルファーとしての活動も続けるべく、今週は上位を目指しQTにも挑戦する横田。「あ、もちろん、仕事としての第1はゴルフです。何勝もできるぐらいになったら、ゴルフ1本で行きますよ」。
口ではゴルフ優先と話す横田だが、気持ちはすでに医学博士に向いている。研究の成果を世に広めるには、10年以来の勝利を自ら掴み獲ることが、もっとも説得力がありそうだ。(高知県芸西村/本橋英治)