100叩きのプロと回った同伴競技者の反応は
あいつにペースを乱された。いつもはもっと良いスコアで回れるのに、一緒にプレーしたビギナーが大叩きをしたから、自分も調子が出なかった。アマチュアゴルファーでも腕が上がるにつれて、そんな思いを抱える時があるかもしれない。けれど彼の前では、そんな言い訳めいたセリフは吐けないはずだ。
プロツアーに初出場した大津将史が初日に「101」を叩き、2日目は「83」で、通算42オーバーで予選落ちした「東建ホームメイトカップ」。大津と予選2日間、同組でプレーした韓国出身のチェ・ジュンウー(崔準祐)は、この2日間を「66」、「69」でまとめ、通算7アンダーの3位タイで決勝ラウンドにコマを進めた。
2日目のラウンドを最終組で終えた後、涼しい顔でクラブハウスに上がってきたチェは、「誰だって悪いプレーをするときはある。それは僕にだって言えることだ」と大津の存在を意に介さなかった。
「スロープレーにもならなかったしね。プレー中に彼と言葉を交わしたわけじゃなかったけど、迷惑と思ったことは無かった。彼のスコアは今日は83。どんなプロも叩くかもしれない数字だろう?」。ラウンド中は確かに、大津がティショットを大きく曲げたと思ったら、小走り気味に次のショット地点へと急ぐ姿があった。
そして何より、チェ自身にとっても日本ツアーの舞台は、昨年の最終予選会を15位で通過して7年ぶりに出場権をもぎ取って戻ってきた場所。1打たりとて、周囲の喧騒に流され、無駄にするわけにはいかなかった。
調子の良くない、あるいは実力のない選手と一緒にプレーすることを嫌う。誰もが抱きかねない気持ちには頷いて理解を示したが、「ただそれを態度に出すことは良くない」と同伴競技者への敬意を忘れなかった。「だって、これはゴルフだから」。
34歳のプロゴルファーは、キャディバッグを自ら抱えてコースを去り、ムービングデーへの準備を急いだ。(三重県桑名市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw