深堀圭一郎「2度目の花を咲かせたい」
深堀圭一郎にとって、昨年栃木県の烏山城カントリークラブで行われた「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」はキャリアの中でも大きな意味のある一戦だった。
左足底の故障から、シード権を逃した2011年シーズンの多くを治療とリハビリに充て、翌12年は選手生活で一度だけ行使できる「生涯獲得賞金25位以内」の権利でツアーに復帰。そして同大会で、優勝した谷口徹に1打が届かなかったが、2位でフィニッシュする快進撃を披露した。敗れた悔しさものぞかせつつも、「やっとここに戻ってこられた」と涙を流したシーンが多くのファンの胸を打った。
そして今年、44歳になった深堀はまた、この日本プロ日清カップで好スタートを切った。初日は4バーディ、ノーボギーの「67」(パー71設定)をマークして松山英樹らと並び首位に1打差の2位タイ。メジャーセッティングでの戦いをまずは制し「ミスショットも大きなミスはなかった。最初から良いゴルフができたので耐えられた」と胸を張った。
2005年の「ANAオープン」以来となる復活勝利へ好発進。しかしまだ初日、54ホールが残されているとあって、ラウンド後は終始慎重だった。「今のゴルフ界は松山選手のような大型の、良い選手が出てきた。彼に正面から向かい合っていくには普通のゴルフでは対応できるとは思っていない」。「ずっと我慢し続ける72ホールをできる精神力、体力が無いと、自分のゴルフが出来上がってこない」。ツアー通算8勝をマークしてきたが、この長い“ブランク”と苦しみの時期を思えば、「昨年のリベンジ」といった軽々しく威勢の良い言葉は出てくるはずがなかった。
同世代の谷口徹、藤田寛之といった現在のツアーを牽引する同世代の面々はもちろん刺激になる。だがその一方で、深堀は丸山茂樹、田中秀道といった一時代を築きながら、いまは低迷にあえぐ仲間を思いやる。「折れていくゴルファーがいて、自分は2度目の花を咲かせられる選手になりたい。一度“死んだ”人間が、表舞台でさらに上がっていくのは大変。でもそれが自分の責任だと思ってやり続けている。つぶれていたのを取り戻すのは、何倍もの力が必要。まだ取り戻しきれていない。今、自分はそこと向かい合っている」。
この日は1月に急逝した佐々木久行さんのため、多くの選手がウエアなどに喪章をつけてプレーした。胸の内にはもちろん、もうこの場に戻る機会すら失ってしまった仲間への思いもある。(千葉県印西市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw