神がかり6連続バーディ…細川和彦 涙のシード復帰
“夏男”が泣いた。高知県のKochi黒潮カントリークラブで行われた国内男子ツアーの今季第24戦「カシオワールドオープン」。昨年末にシード権を喪失した細川和彦が、苦難の末に1年で賞金シード選手に復帰した。
賞金ランク上位70名に与えられる来年度のシード権。前週の「ダンロップフェニックス」を制し4000万円を獲得したツアー外メンバーのルーク・ドナルド(イングランド)を除いた71位がボーダーライン。細川は同69位で今大会を迎えていた。
後続からの逆転に、おびえながらのプレーを余儀なくされる展開。初日に「70」で滑り出したが、2日目、3日目と他選手がバーディ合戦を繰り広げる一方で、2日連続でオーバーパー「73」を叩いた。最終日を前に通算イーブンパーの62位タイ。「アンダーパーで回れなければ、“来週”行くしかない」。次週のファイナルQT参戦が頭にチラついた。
しかしインコースから出たこの日、13番で2メートルを沈めて最初のバーディを奪うと、一気に走り始める。ショットが面白いようにピンに絡み14番でも2メートル、15番でも1.5メートルを沈めた。さらに3つ、立て続けに決め、神がかり的な6連続バーディ。「ドライバーは打てば真っ直ぐ、パターも打てば入った」。後半は8番(パー3)で6メートルを沈め、7バーディ、ノーボギーのベストスコア「65」。通算7アンダーの35位タイで、ランキング69位を確保した。
アテスト小屋に入り、「おめでとう」の声に思いがあふれた。「信じられないですね…。優勝の次に嬉しい」。ツアー通算8勝の41歳が人目もはばからず、涙をこぼした。今大会は直前に帯同予定だったキャディが体調不良のため離脱するアクシデント。月曜日に「仕事を探しに来た」という水巻歌南(かな)キャディと急造タッグを組んだ。しかし「女性だったから、プレーが悪くても怒れないしね」と最後まで冷静さをキープ。“運命的な”出会いも奏功した。
ひざのほか各箇所の故障、不振に陥った昨シーズン。新たに茨城GCと所属契約を結んだばかりだっただけに、不甲斐無い自分を悔いた。それでも激減したレギュラーツアー会場で過ごす時間の代わりに、いつでも練習ができた。時には同コースの池での魚釣りで息を抜きながら…。「いろんな人に迷惑をかけた。一生懸命練習をした。ゴルフの神様が見ていてくれたと思う」。初めて味わった苦難から解放されて出た言葉、そのほとんどは周囲への感謝の思いだった。(高知県芸西村/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw