異色のアラフォー?兼本貴司
「試合巧者」や「いぶし銀」、ベテラン選手を表現する方法は数あれど、こちらのアラフォー戦士は、同世代のプレーヤーたちと一緒にできないところがある。千葉県のザ・カントリークラブ・ジャパンで開催中の国内男子ツアー第6戦「ダイヤモンドカップゴルフ」3日目。藤田寛之が通算15アンダーまでスコアを伸ばし、単独首位を堅守する中、3打差の単独2位につけたのはツアー3勝目を狙う兼本貴司だった。
7アンダーの5位で第3ラウンドを迎えた兼本は、前半3番でティショットを左に曲げたのをきっかけにボギーが先行。しかし続く4番から、突如エンジンをふかした。このパー3で5メートルを沈めると、7番まで一気に4連続バーディを奪取。単独2位に躍り出ると、後半は2バーディをマーク。10番では3番ウッドでのティショットを思い切りダフり、ウェッジで打つ予定のセカンドショットを192ヤード残しながらも7番アイアンでピンそば1メートルにつけて見せた。
2週間前、師匠の中嶋常幸から得た“ヒント”が活きた。「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」で、同組で回った際、中嶋はこれまでのボールから、よりスピン量のあるモデルに替えていた。それを見て「僕にもください」。2シーズン前からオレンジ色のカラーボールを愛用しているが、最終日は先輩からもらった白いボールでプレー。「暖かくなるとボールが飛びすぎてしまう」という悩みにマッチし、アイアンショットが復調し始めた。
2009年の同大会で悲願のツアー初優勝を挙げた兼本は現在41歳。昨シーズンは賞金ランキング72位に終わった。10年の「The Championship by LEXUS(レクサス選手権)」の優勝によって、今シーズンもシード選手とプレーしているが、去年の不調について「自分でも何をやってもまったく兆しが見えない状態だった」と言う。
しかし再起を目指した今オフも、自分のスタイルに変化をつけることはなかった。178センチの体格から繰り出される、飛距離を前面に押し出したプレーを止めようとは思わない。「まだ貫けると思う。腰とかも微妙に悪くはなっているけれど、ヘッドスピードも51~52(m/s)は超えているし。自分の中ではまだ落ちていないと。今日、カート・バーンズと回っても、アイアンの飛距離もそんなに変わっていない。あんな飛ばし屋と変わらないのは嬉しい」。今シーズンからは、アイアンをマッスルバックタイプに総入れ替えした。
ここ数週間で青木功、尾崎将司にかけられた言葉は「頭を使ってゴルフをしなさい」。スーパースターたちの目にも、兼本のプレーには若々しさ、(悪く言ってしまえば)青臭さが見て取れるようだ。
3打差を追いかけるのは藤田寛之の背中。予選ラウンド2日間は、同組でラウンド。そして悟った。「この人には勝てないな」。決戦を前に苦笑いで白旗をあげる。「結構ミスしてくれないと。パッティングも強弱をつけてタッチも合っているし、ライン取りもうまい。ドライバーもそんなに曲がっていないし、強弱もつけてくる」。テクニックでは敵わない。だからこそ、やるべきプレーはいつもと同じ。最終日のアラフォー対決は、「技」と「力」の勝負になる?(千葉県木更津市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw