単独4位の武藤俊憲が充実の4日間
福岡県の芥屋ゴルフ倶楽部で行われた国内男子ツアーの第12戦「VanaH杯KBCオーガスタ」最終日。2シーズンぶりの勝利を狙った武藤俊憲は7バーディ、ノーボギーの「65」で通算18アンダーとし、単独4位で後半戦へ向け浮上のきっかけをつかんだ。
4日間60台をマークし、この最終ラウンドは出だしの1番でバーディを奪ったのをきっかけに、スコアを伸ばしトップ5フィニッシュを果たした。優勝したベ・サンムン(韓国)には4ストローク及ばず「もっと伸ばせるチャンスもあった」と悔しさをにじませたが「4日間、調子の良さをキープできたのは収穫。これから秋の大きなトーナメントに向けて繋げていければいいと思う」と満足感も少なからずあった。
2008年、2009年と1勝ずつをマークし、大きな飛躍を期した昨年は「まともにゴルフをやらせてもらえなかった」と低迷した。左手親指を痛め、復帰してきたと思ったら熱中症や体調不良で離脱。賞金ランクも52位と苦しみは数字に表れた。
だからこそ今年にかける思いは強い。「去年は僕らの世代が落ち込んでいた」。昨季は藤田寛之ら40代、キム・キョンテや池田勇太らの20代、そして10代の石川遼の活躍が目立った一方で、脂ののった30代のプレーヤーは影を潜めた。そんな状況に責任を感じた。そして今季は「でも今年は高山、近ちゃん(近藤)と続いた。自分もやらないとなと思う」と序盤戦で優勝した同世代の選手たちに刺激を受け、燃えるものもある。
ドライバーショットの飛距離と正確性を兼ね備えた武藤のスイングは“美しい”と評されることが多い。だが本人の反応はいたって冷静なもの。「そう言われることはもちろん嬉しい。でもね、僕たちは一番きれいなスイングの選手を決めているワケじゃない。クラブの変なところに当たっても、ピンの近くにつけば、ギャラリーの方も喜んでくれる。自分では納得いかないかもしれないけど、それでいい」と理想と現実のギャップに苦しみながらも、泥臭くスコアを追求しようとする。
国内男子ツアーは12試合を終えて日本勢の優勝者は半分の6人。周囲の期待が大きいからこそ、外国人選手の活躍が目立ってしまうこともある。だが、どんなに小さくとも、プライドと自覚を最後までむき出しにする選手のプレーは、きっと人を惹きつけるはずだ。(福岡県糸島市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw