「甘えあった」準備 米下部ツアー予選会に挑戦した幡地隆寛の反省
◇国内男子◇バンテリン東海クラシック 3日目(1日)◇三好CC西コース (愛知)◇7300yd(パー71)
賞金王が決まるのはまだ2カ月先でも、一部の男子プロにはランキングが大いに気になる季節が過ぎていく。次週10日(月)時点での賞金ランキング順位は13日(木)開幕のPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」(上位8位)、11月の下部コーンフェリーツアーの最終(3次)予選会の出場権(上位5位)獲得につながる。
ボーダーラインを争う攻防が行われていた夏の終わり、来年の米国でのプレーを夢見てひっそりと行動を起こしていた選手がいた。29歳の幡地隆寛は9月、1次予選会(ファーストステージ)を受験するためフロリダ州に飛んだ。
188㎝の大型選手。日本ツアーであまりある飛距離は、海外の広いゴルフ場でこそ生きるという声がかねて大きい。「そう周りに言われつつ、実力が足りないと感じてずっと避けていた」という躊躇(ちゅうちょ)は昨季、初めて賞金シードを獲得したことで断ち切った。「自分でもレベルが上がっていると実感して、良いタイミングかなと思って決心がついた」
シーズン半ばに日本ツアーの3試合を休み、新天地を目指したトライ。全米12カ所の会場から選択したオーランドの南、チャンピオンズゲートGCでの4日間はしかし、最終日に「79」をたたいて通算8オーバー。2次予選進出を前に敗退した。
日本での成長で得た自信はもろくも崩れた。通過ラインの20位タイとは13打差の結果に「自分に失望した」という。想像通り、フェアウェイの幅は多くのホールで日本のコースの「倍以上」あって1Wショットでアドバンテージを取った。飛距離は十分、通用。一緒に回ったアルゼンチンの飛ばし屋からは「何歳?」と驚かれた。
「でも、バーディを獲るのはティショットじゃないんです」と唇をかむ。「セカンドからカップインまでの技術が圧倒的に足りない。環境に対応できる実力がない」
慣れないバミューダ芝からのショット、パットが思うようにいかなかった。「『なんで?』っていうのがすごく多くて。セカンドで予想外の球がたびたび出た」。強い芝目にインパクトを邪魔され、「最終的にはどういう球が出るのかわからなくなった。自分の中の打ち方、感覚が絶対的なものになっていなかった」。通過の望みが薄くなったサンデーバックナインは、辛い午後だった。
「きっと行ける、(予選会は)通過点だと思っていたら壁にぶち当たった」。整えたと思っていた準備は不十分だった。それは技術面におけるものだけではなかったかもしれない、と幡地は振り返る。昨年11月に結婚した志保夫人は外資系コンサルタント企業に勤務し、英語も堪能。フライトやホテルの手配は全て頼った。
「危機感もなく、ちょっとした“甘え”ばかり。PGAツアーに至るまでの準備の大切さもあるはず。自分ではそこも足りていなかったのかなと思うんです」
来年6月に30歳になる。夢はまだあきらめられない。「イチからの気持ちで、残りのシーズンを過ごしたい」とまずは国内ツアーのシード維持に必死になる。
「もう2、3段階くらい(レベルを)上げないと。(予選会の)2日目、3日目が終わったときはボーダーラインにいたが、『これを通過してもセカンドを通れるだろうか』と思ってしまった。ファイナルの上位を狙えるくらいの実力をつけるつもりで準備したい」と目線を高くした。(愛知県みよし市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw