3カ国語を操るあの女子プロは? 男子ツアーでリポート&インタビューに奔走
◇国内男子◇シンハン ドンヘ オープン 2日目(9日)◇KOMAカントリークラブ(奈良県)◇7065yd(パー71)
今週の男子ツアーをテレビ観戦しているゴルフファンの中には、「あの3カ国語を自在に操る女性は誰だ?」と気になった人がいるかもしれない。
立浦葉由乃(たてうら・はゆの)、1996年生まれの25歳。3回目の挑戦となった2017年のプロテストでトップタイ合格を果たした、れっきとしたプロゴルファーだ。プロテストの同期には小祝さくら、勝みなみ、新垣比菜ら1998年度生まれの“黄金世代”がいる。
中継を担当するABEMAの担当者によると、「今回、日本、韓国、アジアの3ツアーの共同主管大会ということで、日・英・韓の3カ国語を話せる方を探していたので、立浦さんにオファーさせていただいた」と起用の経緯を説明した。
父親の影響で5歳からゴルフを始め、福井工大附属福井高校に進学。高校生の時に出場した大会で優勝、MVPを獲得した特典でオーストラリアにあるHills International Collegeに留学した。
同校は元世界ランキング1位のジェイソン・デイや、日本ツアーでも活躍しているアンソニー・クウェイル(ともにオーストラリア)らを輩出したゴルフの名門校。「ゴルフ留学というわけではなかったんですけど、学校で勉強しました」と、2年間の海外生活で英語を習得した。
韓国語の勉強を始めたのは、それからさかのぼって中学生の時だという。韓流アイドル「東方神起」にハマったのをきっかけに「彼らが何を言っているかが分からないのが嫌だったから。文法も(日本語と)似ていて簡単だったので」と、独学で日常会話レベルまで話せるようになった。
人生初挑戦のインタビュー。加えて、同時に扱う言語が3つとくれば、その苦労は想像に難くない。「めちゃくちゃ緊張しました。英語も韓国語も一般的なことは話せるけど、インタビューとなると使う単語とかも変わってくるので苦労しました。通訳の経験も全くなかったので」。2日目、キム・シウー(韓国)へのラウンド後のインタビューでは、韓国語で聞いた質問に対するキムからの返答が英語で、それを視聴者向けに日本語に翻訳して伝えるという“離れ業”を披露した。
プロゴルファーが、プロゴルファーにインタビュー。我々記者とはまた違った視点での質問も出てくる。「コースとか、天気とかでどういうゴルフになりそう、というのは自分の中で分かるので、そういうのは質問しやすかったです」。普段は質問される側の立場だが、質問する側の難しさも感じたようで、「記者の方々の苦労を、本当に身にしみて感じました。こんなに大変なのかって(笑)」と苦労も明かした。
一方で、こちらも初挑戦のラウンドリポート中には予想外の場面にも遭遇した。「初日、木下稜介プロが目の前に高い木がある状況で、私だったら絶対抜けない状況だったので『これは横に出すだけでしょ』と思っていたら、めっちゃ埋まっていたボールだったけど思いっきり上を越えていきました。もう全然違いますね」と笑いながら、男女プロの“違い”を肌で感じた。
2021年のクオリファイングトーナメント(QT)のランキングは206位。今年は下部のステップアップツアーを主戦場とし、今季3試合に出場したがいずれも予選落ちと苦戦している。昨年のQT後にはコーチを変え、今年のQTに向けて目下奮闘中だが、プロゴルファーとしての挑戦を続けながら、新たな道も模索しているという。
「こうやってラウンドリポートさせていただいたり、人生的に、競技だけじゃなくていろんなことに挑戦してみたい、というのもあります」。堪能な語学力を生かしたプロゴルファーならではのインタビューとリポートは引き続き、ABEMAの決勝ラウンド放送(10日3日目、11日最終日、いずれも午前9時30分~)でも発揮する。(奈良市/内山孝志朗)
■ 内山孝志朗(うちやまこうしろう) プロフィール
1995年、東京都生まれ。2018年に新卒でGDOに入社し、CS、ゴルフ場予約事業、練習場事業を経て編集部へ。学生時代は某男子プロゴルファーの試合を見るためだけに海外に行き、観光せずにゴルフ場とホテル間をひたすら往復していた。訪れた町を散策することが出張時の楽しみ。