アナログ手段でしか買えなかった入場券 ツアーの当事者意識は?
◇国内男子◇アジアパシフィックダイヤモンドカップ 最終日(15日)◇大洗GC(茨城)◇7163yd(パー70)
激しい優勝争いが展開された最終日の来場者数は2799人。4日間合計7514人は、今季ここまで有観客で開催された4大会のうち3番目だった。この数字の評価はさておき、今大会は入場券の販売方法について、ファンから不満の声も漏れた。
チケット販売は基本的に前売り券にのみ限定され、購入者は会場の大洗GCに電話またはファクスで直接連絡し、クラブからの郵送で受け取らなければならなかった。申し込みの締め切りは大会前週末まで。種別は平日券と土日券各2枚の計4枚つづり(税込み1万円)のみで、仮に1人で1日だけの観戦であれば残り3枚が不要になる。
当日券の販売は会場ではなく、水戸市内にある中古ゴルフショップ1店舗に限られた。そのチケット種別も前売り券と同じ4枚つづりで1万円。例えば週末(3日目、4日目)に買ったとしても、平日券がセットで付いてくる。
プロゴルフの多くの試合では現状、大会主催者が入場券の販売を管轄する。今回の「ダイヤモンドカップ」は共同主催者のひとつである関西テレビが、大洗GCに委託した。2013年以来の開催となったコースの幹部は「コロナに翻弄(ほんろう)された。本来であれば多くの方に来場していただきたかった」と明かす。
3年ぶりの有観客開催か、無観客での実施かをギリギリまで検討した3月は、まん延防止等重点措置が適用されていた時期と重なる。茨城県では昨年8月に独自の緊急事態宣言を発出した経緯もあり、クラブは県や大洗町の動きも注視していた。「入場券を作るか、作らないか。作っても仕様(チケット種別や販売方法)をどうするか」。大会の開催、来場者の受け入れに関する計画書を自治体に都度作成・提出し、チケットの仕様が決まったのは4月上旬だった。
クラブは開催1カ月前にインターネットを介した入場券販売の契約や手続きは混乱を生むと判断、「アナログな方法を取らざるを得なかった」。設定した上限1日5000人の来場者にはクラブの1600人弱の会員、数百人の大会関係者も含まれる。独自にスタッフを増やして購入申し込みに対応。また、計画範囲内で販路を拡大しようと、直前に中古ショップ以外のゴルフ用品チェーンの地元店舗にも掛け合ったが、時間的な制約が立ちはだかった。
ちなみに同じ頃、アジアンツアーとの共同主管競技である大会は入国に関する水際対策の緩和も相まってアジア諸国の多くの選手の受け入れが決まり、クラブは期間中に提供するハラール食の準備にも追われていた。かつての日常を取り戻そうと、試合の各現場では葛藤交じりの奮闘が続いている。こんな時だからこそ、各大会を横断するツアーの強い当事者意識が必要なはずだが。(茨城県大洗町/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw