TPCソーグラス、近くて遠い2コース
「このコース(ダイズバレー)と、スタジアムコースを比べてどうだい?」外国人記者に問われた石川遼だったが、その質問に答えることはできなかった。米国フロリダ州にあるTPCソーグラス。その中には毎年「ザ・プレーヤーズ選手権」が開催され、浮島グリーンのある17番で有名なスタジアムコースと、今週ウェブドットコムツアーファイナルズの最終戦「ウェブドットコムツアー選手権」が行われているダイズバレーという2コースが存在する。「まだ向こうはプレーしたことがないから・・・」。同じ敷地にありながら、2つのコースの間には見えない壁が存在している。
コース自体の優劣に大きな差があるかというと、そんなことはない。1987年に開場したダイズバレーは、スタジアムコースを設計した鬼才ピート・ダイと、ジェリー・ペイト、さらにボビー・ウィードの共作によるもの。各ホールに池が絡み、フェアウェイは狭く絞られ、微妙な起伏を持つ小さなグリーンはバンカーとラフで堅固に守られている。
昨年までの3年間は、同コースでウェブドットコムツアーの「ウィン・ディクシー ジャクソンビルオープン」が開催されており、その難易度はツアー屈指を誇っていた。素晴らしいコースの一つであることは間違いない。だが、スタジアムコースでプレーすることには、それとは別の意味がある。
話はそれるが、TPCソーグラスの敷地内にはPGAツアー本部も置かれている。そのスタッフたちは、「ダイズバレーはいつでも自由にプレーできる。スタジアムコースは年に4回だけ。もしくはビジネスクライアントと一緒ならばOK」と区別されているそうだ。
今年のウェブドットコムツアーレギュラーシーズン賞金王であるマイケル・パットナムと、現在最終戦を戦っているファイナルシリーズ4試合の賞金王(現在はノ・スンヨルが首位)には、翌年の「ザ・プレーヤーズ選手権」の出場権が与えられる。つまり、ダイズバレーを首席で卒業すれば、スタジアムコースをプレーできるという仕組みになっている。
もちろん、石川にもチャンスは残されている。現在のファイナルシリーズでの獲得賞金は約6.7万ドルで、今大会の優勝賞金は18万ドル。ランキングトップのノの賞金は約21万ドルだ。近くて遠い2コース。こんな演出もウェブドットコムツアー最終戦の盛り上がりに一役買っていると言えるだろう。(フロリダ州ポンテベドラビーチ/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka