笑って、食べて、そして飛ばす!アルバロ・キロスは新時代のスーパースター/ドバイ・ワールドチャンピオンシップインサイドレポート最終日
世界ランク1位のルーク・ドナルドの史上初となる米ツアーと欧州ツアーのダブル賞金王がかかる試合として、逆転賞金王を狙う2位のロリー・マキロイとの直接対決で始まった2011年の欧州男子ツアー最終戦「ドバイ・ワールドチャンピオンシップ」は、アルバロ・キロスの優勝と、ルークの欧州ツアー賞金王獲得で4日間の熱戦の幕を閉じた。
過密スケジュールで体調を崩し、ここ数週間で3~4キロ体重を落としたというマキロイは、3日目にスコアを伸ばせず失速し「ルークは賞金王になるべき素晴らしいプレーヤーだ」と、最終ラウンド目前のインタビューで事実上の負けを認めた。一方のルークは、落ち着いたプレーで最終日前半を3バーディで折り返し、16番からの上がり3ホールを連続バーディとして66、通算16アンダーの単独3位で欧州ツアー賞金王を手にした。
世界中が注目する頂上決戦を横目に、大会2日目にコースレコードタイの64という好スコアをマークし、12アンダーの単独トップに躍り出たのがアルバロ・キロスだ。2月に開催された「オメガドバイデザートクラシック」で優勝したキロスは中東の試合に強い。その理由を「ドバイのように暑い気候でプレーするのが好きなんだ。ドライバーショットが飛ぶ方だから、硬くて速いグリーンをショートアイアンで狙えるのはアドバンテージが生かせる」と自己分析する。欧州ツアーNO.1のドライビングディスタンスを誇るキロスの平均飛距離は312.7ヤードだ。なぜそんなに飛ばせるのだろう?
191cmの恵まれた体型と、長い手足を効率的に使ったスイングはドライバーショットを遠くに飛ばせる理由のひとつだろう。本人に飛ぶ理由を尋ねると「比較的速いスピードでスイングすることを幼いころから実践していたんだ。でも普段は大人とばかりラウンドしていたから、自分が飛ばす方だというのを気づいたのは17歳になって、同級生とラウンドをするようになってから」と語る。目視するのが困難なほど速いスイングから放たれるドライバーショットは多くのギャラリーを魅了して止まない。
彼の魅力は飛ばしだけではない。その底抜けに明るいキャラクターは皆の人気者だ。ラウンド中にとにかくしゃべって、笑って、そして食べまくる。「なぜボギーを打っても笑っていられるのですか?」という記者のいじわるな質問に「これでも笑顔を絶やさないように努力しているんだ。あまりよいプレーができなかったとしても、笑ってさえいれば、次につなげることができると信じている」と、まじめな顔で答えた。そう、彼は努力をして、笑顔を絶やしていないのだ。最終日、最終組でスタートしたキロスは1番、2番、3番をバーディとして独走態勢に入ると思われたが、4番、6番、9番でボギーをたたくと、前半を5バーディ3ボギーで折り返し、同組のローリーに1打リードを許して前半を終えた。その瞬間、笑顔が消えたものの、10番ホールのドライバーショットを放った後は、いつもの笑顔のキロスが戻っていた。その後の勝負のサンデーバックナインでは、14番でバーディを獲ったキロスが再び首位にたち、最終ホールの18番では劇的なロングパットを決めてイーグルとし、優勝を手にした。「いつも楽しそうで、のんきなプレーヤー」と思われがちだが、絶え間ない努力の末に勝ち取ったタイトルであることは、間違いないであろう。(アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ/向井康子)