勝てば最年長記録を更新 56歳ヒメネスの家はドミニカにある
◇欧州男子◇オーストリアオープン 2日目(10日)◇ダイヤモンドCC(オーストリア)◇7458yd(パー72)
紫煙をくゆらせコースを回り、ワインを楽しみながら世界を巡る大ベテラン。ミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペイン)はことし1月5日に56歳になった。現在の主戦場である米シニアツアーの開幕戦「三菱電機選手権」で優勝したのがその2週間後。順調なシーズンの滑り出しから一転、彼もまた新型コロナウイルスの影響を受けていた。
カリフォルニアでの3月の試合の後、ヒメネスはスザンヌ夫人とともにドミニカ共和国にある自宅に滞在していた。「次の試合までの数週間をそこで過ごすつもりだった」という予定は、渡航制限と隔離措置によって頓挫した。スペインに住む息子のほか、親類とは離れ離れに。母国は当時、感染者が爆発的に増えた時期。心配が募った。
それでも、自ら設計したコースもあるドミニカではソーシャルディスタンスを守り、カートに1人で乗るなどの感染防止策に努めればプレーが認められていたのは、プロゴルファーにとって幸運だった。午後5時以降の外出は一切禁止ながら、夫婦の時間を長く過ごしたという。
4カ月のシーズン中断を経て、ヒメネスはドミニカからオーストリアに入った。通算21勝を挙げている欧州のレギュラーツアーの再開戦。「65」をマークした2日目、後続に2打差をつけて単独首位に浮上し、たちまち主役のひとりになった。「いい気分だねえ。試合が4カ月もなかった。トーナメントに戻れてテンションも上がる。ショットも良かったしパットも決められた。なにせボギー(3つ)が少なかったのがカギになった」
今大会は欧州下部チャレンジツアーを兼ねた試合ながら、このままトップでゴールテープを切ると、自身が2014年「スペインオープン」で樹立した50歳133日の欧州ツアー史上最年長優勝記録を大きく更新。2002年に55歳にして日本ツアーで優勝した尾崎将司の記録も、1977年に現在のヒメネスと同じ56歳にしてオーストラリアツアーで69勝を挙げたケル・ネーグル(オーストラリア)の記録も約6週間塗り替えるという。
今週キャディを務めるのは、数カ月ぶりに再会した愛息のビクトルさん。しばらくしてから米国の大学に戻るという。「いつものキャディには1週間オフにしてもらったんだ。息子とこんな風に過ごすのも素晴らしいよ」。今は父子の時間も愛おしい。