2016年を振り返る:ティレル・ハットン編
「すばらしい心持ちだ。僕はウェントワースを歩き回っていた6歳の頃からこの瞬間を待ち望んでいたんだ。信じられないよ」。
少年時代の夢は叶うということを証明した25歳のティレル・ハットンは、2016年のゴルフ界に大きなインパクトを与えた。
2013年にチャレンジツアーからの昇格を果たし、ヨーロピアンツアーでの初優勝を狙っていたハットンによる「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」での4打差の勝利は、ゴルフ解説者たちにとっては驚きでも何でもなく、若きイングランド人本人にとっては、もちろん格別の味わいとなった。
大躍進を遂げたゴルフの聖地での優勝
最終日を7バーディ、1ボギーでラウンドして4打差で「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」を制したハットンは、ハリウッドスターのジェイミー・ドーナンと同組で、セントアンドリュースのオールドコース、キングスバーン、そしてカーヌスティと、世界に名だたるリンクスコースをラウンドした4日間で、人生最高のプレーを披露した。
土曜のラウンドでセントアンドリュースのコースレコードに並ぶ「62」をマークしたハットンは、同じくオールドコースを回った日曜を「66」でラウンドし、通算23アンダーで1週間を終えた。
「あれがこれまでで最高のラウンドだったのは、確実なところだね」。
3打差の首位で最終日を迎えたハットンは、3番で1.8mのバーディパットを決めると、続く4番では7.5mのバーディパットをねじ込む見事なスタートを切り、折り返しまでに4つのバーディを奪った。
「奇妙なことに、ショットに関してはそれほどしっくり行かないことが多々あったのだけど、今週はパッティングにだいぶ助けられたし、それがトロフィーを掲げる上での鍵となったね」と、ハットンは優勝後の記者会見で述べた。
その日は何をやっても上手く行く状態だったハットンは、その後も12番、14番、そして15番とバーディを量産し、今後のキャリアを決定付けるツアー初優勝を確実にしたのである。
「一日中ナーバスだった。14番か15番あたりで、少しゆったりとプレーできるようになったけれど、とにかくこの一線を超えられたことが嬉しいね」。
ハットンはバンカーに捕まった17番でこの日唯一のボギーを叩くも、ゴルフの聖地でガールフレンドや友人たちが見守るなか、最終ホールで冷静にパーパットを沈めて優勝を手にした。
安定感の重要性を証明
わずか一年で何という違いだろうか。
「レース・トゥ・ドバイ」のランキングを35位として2016年を迎えたハットンは、トップ10入りを10回果たし、気付いてみれば、何と4位でシーズンを終えたのである。
23大会の出場で予選落ちはわずか3回と安定感が際立ったハットンは、スコットランドでヨーロピアンツアー初優勝を飾った週に、公式世界ゴルフランキングでトップ50圏内へ入り込むことを狙っていた。
「世界のトップ50以内に入ることを目標としていて、確か、僕は53位で今週を迎えたはずだから、明日の朝、どれくらいランキングが上がるのか楽しみなんだ。でも、もっとランキングを上げて良い年末を迎えることができればと思っているよ」。
その言葉通り、彼のランキングは上がり続けた。一年間で81位もジャンプアップしたハットンは、24位までランキングを上げた。キャリア最高となる平均ストローク「69.93」を記録し、この部門で4位に入ったハットンは、ゴルフのあらゆる要素を向上させ、平均飛距離を伸ばすとともに、パーオン率は70.8%と、非常にソリッドな数字を残した。
紙一重
ハットンは2016年に、2度にわたり紙一重で勝利を逃している。キャッスルスチュアートGLで開催された「アバディーンアセットマネジメント スコットランドオープン」でハットンは、最終日に圧巻のプレーで1打差の優勝を遂げたスウェーデンのアレックス・ノレンに次ぐ2位に入った。
これは必ずしも彼の望んでいた結果ではなかった、その後、スコットランドを再訪した際にはこの経験が存分に活かされ、「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」での優勝につながったのである。
2016年の「レース・トゥ・ドバイ」が終幕に近づくなか、ハットンは「DPワールドツアー選手権」の最終日に、キャリア2勝目まであと一歩のところまで迫った。
しかし、その一歩が遠かった。ハットンは18番でボギーを叩いて同胞のマシュー・フィッツパトリックにチャンスを与えると、フィッツパトリックは最終ホールでバーディを奪ってヨーロピアンツアー3勝目を挙げたのである。
優勝を逃しながらも前向きな姿勢を崩さなかったハットンは、試合後、「もちろん、苦い経験にはなったけれど、すばらしい1週間だったし、今年は人生で最高の年だったからね。だから、そう落ち込んでもいられないし、こういうのは往々にして起こることだから」と述べた。
「まあ、結果は変えられないし、僕はこの1週間に満足しているよ。次のチャンスは、しっかりものにできれば良いね」。