モリナリ躍進の裏にあるスタッツを徹底分析
フランチェスコ・モリナリ(イタリア)は2008年以降、コンスタントに世界ランキングトップ100圏内を維持してきた。ただ、彼がこのゲームのエリート選手としての地位を固めたのは昨年のことだ。何がキャリア中盤におけるルネサンスを引き起こしたのだろうか? 我々はゴルフの統計を専門とする15thクラブに調査を依頼した。
パワーではなく精度
2008年から15年の8シーズンにかけてのモリナリを見てみると、パワーではなく精度重視の選手に分類されることが分かる。
その間、ヨーロピアンツアーで毎シーズン、フェアウェイキープ率で13位以内に入っており、このスタッツの平均ランクを6位としている。しかし、同じ期間中、平均飛距離で93位以内に入ったことはなく、ヨーロピアンツアーでは7回にわたりトップ120圏内からもれている。
この期間に世界最高のアイアンプレーヤーの一人という評価を高めた。08年から15年にかけて、ヨーロピアンツアーにおけるパーオン率の平均ランクは19位。10シーズン連続で70%以上のパーオン率を記録しているが、これは驚くべき達成である。
スピードアップ
36歳となったが、クラブのヘッドスピード向上と飛距離アップに重点をおいているのは明らかである。
35歳と29歳のときとを比較すると、ドライバーは平均して時速5.5マイル速くスイングしている。これはそれほど大きな差に感じられないかもしれないが、結果は驚くべきものだ。18年にキャリアで初めてヨーロピアンツアーでの平均飛距離でトップ50圏内にランクインしたのである。11年のスタッツの順位は173位だった。
飛距離向上とエリート級のアイアンプレーを組み合わせると、ワールドワイドで3勝、トップ10入り7回、「ライダーカップ」における歴史的なパフォーマンス、そして世界のトップ5入りという昨年の成績が見えてくる。
2018年の躍進
昨年は1年を通して印象的な活躍を見せたが、パフォーマンスが極限まで高まったのは優勝した5月「BMW PGA選手権」から7月「全英オープン」にかけての6大会だった。この6大会で3勝を挙げ、2位に2回入り、「全米オープン」でも25位タイと健闘を見せた。この6大会で合計888人の選手と競い合い、97.1%の選手よりも上かタイの順位で大会を終えている。また、その間の最後の12ラウンドでの平均スコアは「66.7」とし、通算48アンダーとしている。
もちろん、トレードマークでもあるアイアンの精度が大きな役目を果たしたのは言うまでもない。また、優勝した3大会では終盤に驚くべき精度を見せてボギーを回避した。「BMW PGA選手権」では上がり44ホールでボギーを回避し、優勝した米国の大会では上がり28ホールで、「全英オープン」では上がり37ホールでボギーを回避することに成功した。
2019年以降
今年は昨年のレベルにまでパフォーマンスがあがっていないことは自身も分かっていることだろう。米PGAツアーでのアイアンプレーは2019年に入って、グリーンを狙ったショットのストローク・ゲインドでトップ100圏外にランクされている。また、同ツアーでのパーオン率は64%を下回っており、これまで安定して70%以上の数字を残してきた安定感からは程遠い数字となっている。ヨーロピアンツアーにおいては、フェアウェイキープ率で43位とそれなりの順位にランクインしているが、ここ12年で最低のランクとなっている。
とはいえ、10年以上にわたって卓越したショットを見せてきたことを考慮すると、これはキャリア中盤に起こったルネサンスの中の一時的な低迷であると言えそうだ。そうであることを証明する上で、今週、地元で行われる「イタリアオープン」ほどうってつけの大会もないだろう。