獅子奮迅の中島啓太 首位奪還から“世界一”の授与式へ/アジアアマ3日目
◇アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権 3日目(5日)◇ドバイクリークゴルフ&ヨットクラブ(UAE)◇7203yd(パー71)
コースの中でもコースの外でも、世界アマチュアランキング1位の中島啓太にとっては激動の一日となった
この日の第3ラウンドは5バーディ、1ボギーの「67」。通算11アンダーで1打差の単独首位に立ったが、決して楽な展開ではなかった。「ちょっと頭が回らないけど、4アンダーというスコアは良かったと思います」というのがホールアウト後の第一声。最終18番はティショットを左サイドのレッドペナルティエリア(クリーク)に打ち込んだが、救済後の3打目をピン手前5mにつけてパーセーブ。力強いガッツポーズで締めくくった。
「こんなことは初めてですね。喜怒哀楽(が激しい)というか、一瞬でイライラして、一瞬で戻るっていうのがたくさんあったので、ちょっと疲れる一日になりました」と振り返る。今年最大の目標に掲げてきた「アジアアマ」の決勝ラウンド。中島は暴れ馬を制するように、激しく揺れる感情の手綱を握り続けた。
3番はグリーン左のラフから砲台グリーンの斜面にクッションさせて1mにつける絶妙なアプローチ。「落とす場所の芝の薄さとか、形状とかを完璧に理解できました」と、続く4番(パー5)も獲って2バーディを先行させた。
だが、8番(パー3)で3パット。折り返した10番(パー5)でも1mのバーディパットがカップをなめた。ここ2日間ほとんどなかったパットミスだが、「もっと読めば良かったというか、芝目とかをもっと理解していれば攻略できた」と原因は読みの深さ。引きずることはなかったが、「ボギーを打つことがイライラした」と感情だけは逆立った。
11番をバーディとしたものの、12番はチャンスを生かせずパー止まり。続く13番(パー5)の第2打は「刻む選択肢はなかったです。絶対に行かなくちゃいけないと思って150%集中した」という残り230ydのセカンドショット。「風は一番難しい左からのアゲンスト」という中で放たれた3Iショットは「完璧なショットでした」と強い弾道のフェードボールでグリーンを見事にとらえ、2パットのバーディとして流れをつかんだ。
16番では5mを沈めて通算11アンダーとした。最終日は大会3勝目を目指すリン・ユーシン(中国)にサム・チョイ(韓国)を加えた最終組でタイトルを目指す。
ところが、まだ一日は終わらない。夜には、大会のガラディナーとアマチュア年間世界一の称号であるマコーマックメダルの授与式に出席。中島は受賞の英語スピーチを自身で用意して、ドバイ入りしてからも朝晩と音読して準備してきた。オーガスタナショナルGCチェアマンのフレッド・リドリー氏やR&Aキャプテンのピーター・フォースター氏、出場選手らが見守る中で堂々と披露した。
「始まる前はすごく緊張したけど、しゃべるときは意外と周りがよく見えて緊張せずに話せました。一番は去年の金谷(拓実)さんに続けたのがうれしいです」と、ひと仕事を終えてほっとしたような笑顔を見せた。「来年はすごく大きな年になると思うので、もっと大きい年にするためにあした優勝できるのがベストかなと思います。自分に勝てれば優勝はできると思うし、どんな一日になっても最後のアジアアマなので諦めずに頑張ろうと思います」。残された最後の仕事に挑んでいく。(アラブ首長国連邦ドバイ/今岡涼太)