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<選手名鑑203>ケビン・チャッペル

■ 目の上の大きなタンコブ ジェイソン・デイがいなければ…

ケビン・チャッペル(29)は絶好調。フェデックスカップランクもトップ10をキープするなど、キャリア最高のシーズンを送っている。だが、どうしても初優勝がつかめないでいる。今季も優勝への大チャンスは3度あった。昨年11月のRSMクラシックで、勝者ケビン・キスナーに6打差で単独2位。敗れはしたものの、“勝機のある”良い雰囲気を漂わせていた。

2度目は3月のアーノルド・パーマー招待で、勝者ジェイソン・デイ(28)に1打差の単独2位でフィニッシュした。最終日は「69」でプレーして通算16アンダーで先にホールアウトしていた。最終組のデイは18番(パー4)の2打目を左バンカーに打ち込み大ピンチ。下りのラインで、奥には池が待ち受ける難しいバンカーショットを残していた。デイがボギーにすればプレーオフとなり初優勝の夢をつなぐことになる。しかし、デイはその難度の高いバンカーショットを1mにつけ、あっさりパーで納めてしまった。初優勝を逃したチャッペルは、その瞬間キャップのつばを下げて顔を隠した。これでPGAツアーのキャリアで2位は4回目。次こそは!と改めて誓ったが、まさか2か月後に、同じフロリダで、またデイに敗れ、2位になる運命が待っているとは夢にも思わなかっただろう。

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その3度目は5月のザ・プレーヤーズ選手権だった。初日からデイが「63」のコースレコードタイで突っ走り、首位を譲らず完全優勝を果たした。チャッペルは4打及ばず、またも単独2位でのフィニッシュ。優勝には届かなかったが、世界のトップランカーが揃う準メジャーで、彼のゴルフにかつてない凄味を感じた。予選2日間は低調で、何とか予選を突破。3日目はコースコンディションが極端に難しくなり、多くの選手が脱落していく中で、彼は粘り抜き単独2位になった。

3月、5月と春のビッグイベント2試合で、デイだけを越えられなかったことに「易しい状況でスコアを伸ばし、難しくなっても崩さないのが一流。僕は易しい時にスコアを伸ばせなかった。そこが大きな違い」と、優勝と2位の差は大きいと感じていた。初優勝は世界ランク1位に勝るプレーが必要という高いハードルが立ちはだかる。チャッペルがデイに2度も阻まれた経験をどう生かすのか?まずは今季4度目のチャンスをつかまねばならない。

■ 最愛の兄の死を乗り越えて

チャッペルは1986年7月8日、サンフランシスコとロサンゼルスの中間点にあるカリフォルニア州フレスノで生まれた。父の指導で5歳からゴルフを始め、ジュニア時代から頭角を現すと、地元のタイトルを総ナメにした。5歳上の兄スティーブンも一緒にゴルフを楽しみ、試合でも惜しみなくサポートをしてくれ頼れる存在だった。チャッペルはジュニア時代の実績が認められ、ゴルフの強豪校UCLAに進学。チームのエースとして活躍した。兄はゴルフ場のスーパーインテンダントを目指し、カリフォルニア州のデザート大学で植物学の勉強に励んでいた。離れて暮らすようになっても、兄は時間を作って試合の応援に駆けつけてくれていた。

チャッペルが大学3年生のことだった。10月3日、突然、兄が24歳の若さで亡くなったとの訃報が飛び込んできた。25歳の誕生日を迎えるわずか6日前のこと。糖尿病による心臓疾患が原因だった。兄を突然失うという衝撃で、しばらくは何も手につかなかったが、ゴルフ部コーチのデレク・フリーマンや、チームメイトの支えで試合に復帰。ボールに兄のイニシャルを記し、兄が愛用していたコインをマーカーに使うなど、追悼のラウンドを繰り返した。その姿を見守ったコーチは「悲痛な経験でケビンは毎日が当たり前に訪れるものではないと知った。練習も以前より集中し、熱心にするようになっていた」。兄は喫煙者でケビンもタバコが好きだったが、兄の死をきっかけに喫煙を止めた。

以降、見違えるようなプレーを続け、大学生最後のシーズンとなった08年には、ジャック・ニクラスアワードとアーノルド・パーマーアワードを同時受賞。米国学生アマチュア選手として最高の栄誉に輝き、同年末は世界アマチュアランク3位、同年6月のパーマーカップを終えた翌日にプロ転向を果たした。

■ 激しすぎるアップ&ダウン

ミニツアーなどを経て2010年からウェブドットコムツアーにフル参加。4月のフレッシュ・エクスプレス・クラシックで初優勝を飾った。同年の賞金ランク9位となり、2011年からPGAツアーに昇格した。チャッペルのゴルフはとにかく好不調の波が激しい。25試合に参加し、予選通過は12回と、予選落ちの方が多かった。とは言え、テキサスオープン2位、ロリー・マキロイ独走優勝だった全米オープンで3位タイと、自身のメジャー最高位フィニッシュを決め、賞金ランク66位と健闘した。

その後もアップ&ダウンの傾向は変わらず、2013年「メモリアルトーナメント」でも、最初の27ホールで8ボギー、3日目は9ボギーを喫したが、最終日は4バーディ、ノーボギーのバウンスバックで終わってみれば自己ベストタイの2位。8月、プレーオフシリーズ初戦のバークレイズ初日には「62」のコースレコードをマークした。昨年のフェデックス セントジュードクラシックの2日目には、バックナインで「29」をマークして9ホールの最少スコア記録更新。際立つプレーも印象に強く残る。好実績の今週、そしてメジャー試合のベスト3位タイの全米オープンで、激変チャッペルの劇的フィニッシュはある!?

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

関連リンク

2016年 フェデックス セントジュードクラシック



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