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RBCヘリテージ
期間:04/14~04/17  場所: ハーバータウンGL(サウスカロライナ州)

<選手名鑑195>ブライソン・デシャンボー(上)

「マスターズ」を終えプロ転向。今週プロデビュー戦を迎えるデシャンボー(Ross Kinnaird/Getty Images) ※撮影は2016年「アブダビHSBC選手権」

■ 噂のBeau(ボー) 遂にプロの世界へテイクオフ!

3年前、テキサス州ダラス在住の友人カート・サンプソンから「ボーと言う、アメイジングな選手がいる」と聞いた。サンプソンとは30年来の付き合いで、僕が米国在住時代はゴルフ仲間でもあった。彼はPGAツアーでのプレー経験があり、引退後は執筆家に転身。緻密な取材によるベン・ホーガンやマスターズ関連の書籍の著者としてよく知られる。その彼が「ボーはゴルフの常識を変えるかもしれない」と断言していた。時間が経つにつれ、僕はその言葉の意味が分かってきた。

長年のゴルフファンはブライソン・デシャンボー(22)を見て、すぐに思い浮かぶ選手がいたと思う。全米オープンなどメジャー3勝、通算11勝の大活躍をしながら、99年、42歳の若さで飛行機事故により急逝したペイン・スチュワートだ。彼はハンチングにニッカボッカとスタイリッシュで、プレーはアグレッシブ。存在感のある選手だった。デシャンボーはジュニア時代からベン・ホーガンを真似てハンチングをかぶり、憧れていたスチュワートと同じサザンメソジスト大学(テキサス州ダラス)に進学。現在に至るまで先輩への敬意も込めて、ハンチングを愛用し続けている。

デシャンボーは大学を退学して約半年が経つ。人気者の彼は世界からひっぱりだこで、最近は各地を転戦していた。昨年11月には豪州マスターズで2位タイ、今年1月には欧州ツアーのアブダビ選手権にも招待され、初日「64」の好スコアで首位に立つなど、世界各地でセンセーションを巻き起こしていた。今年1月にはプロ転向に備え、エージェント契約(アマ規定でプロになるまで金銭は受け取れない)も締結。先週のマスターズでアマチュアのキャリアを終えプロ転向を表明し、いよいよ今週のRBCヘリテージでプロデビュー戦を迎える。

■ 輝くアマチュアのキャリア

それにしても輝かしいアマ時代だった。マスターズでは21位タイで、堂々のローアマチュアを獲得して有終の美を飾った。大会2日目、17番終了時点では首位ジョーダン・スピースに1打と迫る活躍。米国の中継局CBSのアナウンサーも「優勝すればマスターズ史上初!」を興奮気味に何度も強調していた。

今年のマスターズへの出場権を獲得したのは、アマ世界一決定戦ともいえる2015年の全米アマ選手権での優勝だった。会場はイリノイ州シカゴ郊外オリンピア・フィールズCC。36ホールマッチプレーによる決勝戦は、蒸し暑い盛夏の8月23日に行われた。対戦相手はバージニア大学のデレク・バードだった。デシャンボーは午前の18ホールから2アップとリードし、午後は勢いを加速させ5アップ、結果は7&6の圧勝だった。

同年6月には南フロリダ大学のコンセッションGCで行われたNCAAで個人優勝(チームは14位)。最終日は強風の中、「71」でプレーし、通算8アンダーで逃げ切った。同一年に両大会に優勝した選手は、ジャック・ニクラスフィル・ミケルソンタイガー・ウッズライアン・ムーアで、史上5人目の快挙を成し遂げた。マスターズのローアマにも輝き、アマチュアの最高栄誉のほぼすべてを獲得。今週は満を持してのプロデビューとなる。

■ こだわり抜いたクラブセッティング、均一尺のシャフト

デシャンボーの際立つ個性のひとつは、アイアンに施した独特な工夫だ。ロフト20度の3Iから60度のロブウェッジまで合計10本を使用するが、シャフトの長さを全て同じ37.5インチにセット。つまり一般的な6I、7Iの長さに統一しているところだ。普通のアイアンの長さは番手によって変わる。ヘッドバランスを合わせるため、ヘッドが重くロフトの大きいクラブになるほど短くなる。長さを番手に応じて変え、同じヘッドバランスにすることで、全てのアイアンを同じような感覚でスイングできるように調整している。ヘッドバランスはD0~D2前後で調整されることが多く、ウェッジに関してはやや重めに調整する人が少なくない。

今年1月のアブダビ選手権初日に首位に立った時の会見で「僕はある意味でゴルフ科学者です。あらゆる視点からコースと自分のプレーを分析し理解したいと思っている」と語っていた。大学では物理学を専攻し、出来事や事象に対する好奇心が旺盛で、ゴルフに関してもとことん理由や原因を探求し続けてきた。より安定したスイング、正確なショットを求め、思考と試行を重ねた結果、「全てのクラブで同じように構えられれば、より反復性が高まるのでは?」という答えに至り、シャフトの長さの均一化に踏み切った。

■ 均一のヘッドウェイトとライ角

だが問題が発生した。シャフトの長さを同じにすると、ヘッドバランスが番手ごとに異なり、同じような感覚やタイミングで打てなくなることだった。そこで「ヘッドの重さも全て同じ、均一にすること」だと閃いた。そうすれば理論上ヘッドバランスが均一となり、同じ感覚でスイングできるようになるはずだからだ。「シャフトの長さもヘッドの重さもライ角も全て同じにすれば、全てのアイアンで同じ姿勢で構えられ、同じ感覚やタイミングを生み出しやすく反復性も高まる」。これが行き着いた結論だった。

この構想を某クラブメーカーに相談したところ、制作に興味を示し協力してくれた。試行錯誤の末、最も振りやすさを感じるのは「ヘッドの重さ280グラム」と判明し、全てのアイアンヘッドをその重量に統一した。試作クラブを打ってみると「弾道の軌跡が糸を引くように見え、打球は力強く目標に飛んでいった」と思わず興奮したそうだ。

※次回は第二編~独特のSingle-Plane Swing完成へ

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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