松山英樹が19年初戦へ アマチュア・金谷拓実は米ツアーデビュー
2017年 全米プロゴルフ選手権
期間:08/10〜08/13 場所:クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州)
「勝てる人になりたい」松山英樹、白いタオルが受け止めたメジャー惜敗の涙
◇海外メジャー◇全米プロゴルフ選手権 最終日(13日)◇クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州)◇7600yd(パー71)
戦いの汗を含んだ白いタオルが涙を受け止めた。首位に1打差の2位から日本勢初のメジャー優勝を狙った松山英樹は5バーディ、6ボギーの「72」で回り、通算5アンダーの5位で終えた。10番を終えた時点で単独首位に立ちながら、11番からの3連続ボギーで後退。同組でプレーしたジャスティン・トーマスにメジャー初タイトルを譲った。
<< 下に続く >>
勝者への歓声を背中越しに浴びながら、目に涙を浮かべて18番グリーンを降りた。ただただ、悔しい。タオルにうずめた頭を上げるたびに、松山は泣き、顔をまた覆った。
「日本ツアーで、アマチュアでやっていたときのような緊張の仕方でした」というスタートから、不調を嘆いた前日までとは違い、ショットでリズムを作った。「きのうよりは良いショットが出てピンにも行っていた」。第1打をピンそば3mにつけた6番(パー3)から2連続バーディを決め、8番を終えて単独首位に浮上。10番(パー5)で6mのバーディパットをカップの向こうの”壁“に当てる強気のパットで3つ目を決めた。
サンデーバックナインの流れが、急激に目の前の相手に傾いたのはその直後だった。10番で、トーマスの2.5mのバーディパットはカップの左フチで止まった。天を仰ぐこと数秒。あきらめて歩き出そうとした瞬間、ボールがコロンと消えた。風か、運命のイタズラか。「ジャスティンは9番でも難しいバーディパットを入れていた。10番はああいう形でバーディを獲って『なんか、持ってるな』と思った」。松山も悪い予感を抱いた。
続く11番では312ydを飛ばした1Wショットの後、フェアウェイからの2打目をグリーン右のピンに近いサイドに外し、ショートゲームにミスが出てボギー。「バーディチャンスにつけられる位置からボギーにしたのが、ふがいない」。12番の1Wは「良いショット」が左の木に当たり、深いラフにはまってボギー。さらに13番(パー3)はピンを大きく右に外すショットで3連続ボギーをたたき、一気に3打差をつけられた。
終盤14番から2連続バーディで再び1打差に詰め寄り、難関の上がり3ホール“グリーンマイル”を迎えたが、16番で1mのパーパットがカップに蹴られパターが宙を舞った。「ティショットのミスと(パー)パットのミス。入らなかったのが結構、効きました」
2位で終えた6月「全米オープン」、7打差の5位から最終日をスタートした7月「全英オープン」以上にチャンスはあった。64ホール目までは、ワナメーカートロフィに誰よりも近い位置にいた。「ギリギリのところでやれるのは楽しい。勝てれば、なおさら楽しい」。極限の緊張状態で戦える喜びはあるが、あと一歩が届かない要因を松山は必死に探る。
今季は世界ランキングでトップ3に入り、米ツアーの年間ポイントレースもけん引。前週「WGCブリヂストン招待」で最終日に圧巻の「61」をマークしてシーズン3勝目を挙げた。“彼ら”とそん色ない力を持つことは誰もが知っている。「気持ちの部分も成長しないといけない。ただ、自信を持って打てる技術がないのかなと思う」と松山は言った。一方で、「やっぱり、場数が増えればそれだけチャンスが増える。その1回に当たるように、チャンスを増やしたい」と、歩みを止めずにいれば順番が巡ってくることへの確信もある。
「ここまで来た人はいっぱいいる。ここから勝てる人と、勝てない人の差が出てくると思うんで。勝てる人に、なりたいなと思います」。泣きはらした目で松山は誓った。ここまでたどり着いた選手だけが知る涙の味。惜敗の重みを受け止めながら、2017年のメジャーを戦い終えた。(ノースカロライナ州シャーロット/桂川洋一)