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ZOZO後記
マーケティングの視点から/初めての「ZOZOチャンピオンシップ」後記 その(3)

2019/12/25 16:30

2019年10月、世界最高峰のゴルフツアーであるPGAツアーが「ZOZOチャンピオンシップ」として初めて日本で開催された。タイガー・ウッズの通算82勝目で華々しく閉幕したが、光浴びるところには陰がある。初回大会の成功の裏には、数多くの苦労があった。日本側のトーナメントディレクター(大会事務局長)を務めた株式会社ZOZOの畠山恩(はたけやま・めぐみ)さんと激動の時間を振り返る連載第3回。無観客で開催された日もありながら5万6888人が来場した大会を踏まえ、ゴルフとスポーツマーケティングの可能性を探る。

■値付けの妙

優勝に王手をかけたタイガー・ウッズを、母国の期待を背負った松山英樹が追う。タイトル争いのシーンは、これ以上ない興奮を呼ぶ展開になった。初回大会の78人のフィールドは豪華そのもの。ロリー・マキロイ(北アイルランド)を筆頭に欧州のトップ選手も集結した。畠山さんは「役者がそろうと、これだけ違うというのはあるのでしょう。海外の有名選手が2、3人…ではなくて、ツアー大会が“そのまま来た”というのはインパクトがあったと思います。私自身も練習グリーンで感動してしまうほどでした」と言う。

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米ツアーの他大会も参考にして準備したグッズは、完売が続出した。ピンフラッグ、キャップ、ポロシャツ…。「もっと作れば良かったと思います」。比較的、“白いもの”から売れたというのは、購入者が選手にサインをもらいやすいのが理由と推察している。

観戦チケットは前売り段階で、9月上旬に練習日を除いて完売した。7月上旬に発表された券種は最安値で平日1万2000円、週末1万3000円。VIPラウンジ付きチケット(9番ホールグリーンを間近で観戦できる本戦4日間の通しチケットと駐車券のセット)は60万円と高額ながら人気があった。

今回の価格設定は少々“強気”ともいえる。実際、畠山さんが昨年までディレクターを務めた女子ツアー「サマンサタバサ ガールズ」は前売り券で5000円(各日共通2枚つづり)、当日券が各日3000円。「ZOZO」はPGAツアーのほかのトーナメントに比べても割高で、男子の海外メジャーと同等といったところだ。

「価格設定は最後まで悩みました。自分ならいくら出すか、ゴルフファンならいくら出すか、“付き添い”のような形で来場する方はいくらなら納得するか…。場内でどれだけの付加価値をつけられるのか。ほかのプロスポーツやコンサートとも違って、ゴルフは一日中楽しむことができるエンターテインメントでもあります。適正か適正でないかは、やはりお客様が決めることではないでしょうか」

■ゴルフトーナメントで儲けることは可能か

大会は大雨の影響で2日目(10月25日)の競技が順延となり、3日目(26日)は来場者の安全を考慮して無観客で行われた。両日の入場券は払い戻し対象となった。1日約2万人が来場したと仮定すれば、単純計算で2億円前後の収入が消えたことになる。

だが、仮に4日間、予定通りに進行していたとしても、そもそもチケット収入だけでは、出場選手の賞金総額975万ドル(約11億円)すらまかなえない。これまで、スポンサー企業にとってゴルフトーナメントは宣伝・広告の一環であり、“額面”で利益を生むものでなかったのが実情だ。

畠山さんの率直な印象も「黒字化するのは、相当高いハードルだと思う。会場のキャパシティやロジスティクスの限界を考えると、様々な条件や環境が整わないとそこはなかなか見えてこない」というものだ。その意味では、ウッズをはじめとしたトップ選手が集結した事実は“整った条件”で、悪天候はその逆だった。

畠山さんは「でも、可能性は見えなくはない」とも言った。「スポーツマーケティングは面白いと思いました。外国の記事で、プロ野球では観客動員数(率)は日本の方が多いにもかかわらず、MLBの方がチケットセールスに優れているという話を読んだことがあります。ゴルフも当てはまるかもしれません」

■スポンサーのベネフィット

大会側の収入は入場料、グッズ売り上げ以外に、場内にマーキー(テントなどの屋内施設)を設営して協賛企業に使用権利を販売するシステムがある。屋内では料理が振る舞われたり、天候に左右されずに眺めの良い場所を確保できたりと、一般入場とは異なるバリューを提供できる。これはゴルフに限ったことではないが、「日本のトーナメントは米国に比べてまだ利用できる“伸びしろ”があるのかも」という。

「米国のスポーツマーケティングの発展は、スポンサーシップをすごくうまく使っていることが大きいように思います。 “ベネフィット”として感じるものは、企業さんごとに違う。例えば、ある会社は『企業のロゴが地上波のテレビに何回(何分)映るか、ということ』を重視する。別の会社は『B to Bの仕事がメーンなので、お客様を招いて素敵な空間を提供したい』と考える。『B to Cのビジネスだから、ギャラリー向けの販促や顧客満足度を上げる』ことを目指す会社もある。企業さんが購入したスポンサーシップをどう使いたいか、という点を大会側がきっちり把握して提供できれば、互いにとって望ましいものになるはず」

男女合わせて年間70試合近く、下部ツアーを合わせると100試合以上を開催しているのは、米国と日本だけといっていい。ゴルフトーナメントは確固たる歴史を築いてきたが、ビジネス視点がどこか“曖昧”なまま、これまでの仕組みを“セオリー”として疑ってこなかった事実もありそうだ。

「東京オリンピックのホスピタリティプログラムを見ると、テント内でモニター観戦するだけの空間(生観戦はできない)を用意するカテゴリーもあるんです。スポーツマーケティングの市場もどう育つかは学んでいる最中。日本はラグビーのワールドカップも、オリンピックも行われる。いまこそ、新しいアイデアが育ちそうが気がしますね」
(編集部・桂川洋一)

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