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佐藤信人の視点 勝者と敗者

ストローク差以上の接戦を制した “愛されキャラ”堀川未来夢

優勝スピーチでは、誰からも愛される彼の人柄がにじみ出ていました。国内ツアー「日本ツアー選手権 森ビル杯 Shishido Hills」で初優勝をメジャーで飾った26歳の堀川未来夢選手。キャリアで先を行く同学年の今平周吾選手との最終日最終組は、とても見ごたえがありました。

結果を見れば4打差の完勝。しかし、最終日の終盤はどちらに流れが傾いてもおかしくない場面がありました。14番はティから25ydほどの打ち下ろし。右にOBゾーン、左にはユーカリの木がせり出し、ティショットはドローヒッターにもフェードヒッターにも非常に難しいホールです。追われるプレッシャーがかかる場面で、特に嫌なホールでもありました。

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直前の13番で2つ目のバーディを奪った今平選手に先に素晴らしいティショットを打たれた堀川選手は、1Wを選択。4打差ということを踏まえれば、個人的には3Wでも良いかも、と思っていましたが、持ち球のドローでフェアウェイをキープしました。ティアップの時点では、ティイングエリアの左右どちらから打つか、定まり切っていない感じがありましたが、逃げずに攻めた結果、同ホールでバーディを奪いました。

5打差として流れを完全につかんだようにも見えましたが、相手は昨季賞金王。続く15番(パー5)、今平選手は第1、2打と完璧なショットを続けて先にイーグルを奪取。特に第2打は鳥肌が立つくらい、素晴らしい一打でした。一方、堀川選手は2mのバーディパットを残しました。ここで外せば、上がり3ホールを前に3打差になり、一気に流れが傾く場面。ただ堀川選手は難なくこのパットを沈めました。

これは直感に近いのですが、仮に堀川選手がこのパットを外して3打差で16番(パー3)を迎えていたら、今平選手は第1打をベタピンに絡めた気がします。あれだけ素晴らしい2打を続けてのイーグルで、気持ちは乗ったと思います。しかし、今平選手は結局、第1打を左に外してボギー。これで勝負が決まりました。

堀川選手は昨年「ダンロップフェニックストーナメント」と「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で、ともに最終18番のボギーで優勝を逃しました。今回で最終日最終組は5回目。ただ、個人的には、彼が勝負弱いと思ったことは一度もありません。上位で最終日を迎えると、早々に崩れてしまう選手もいます。彼は勝利こそありませんでしたが、72ホール目までチャンスを残すのです。これは緊張感高まるラウンドでも、しっかりスコアを作れるということです。

さらに彼の前向きで人懐っこい性格も、今回の優勝を引き寄せたと感じます。普段から気さくで先輩にも後輩にも好かれるタイプ。惜敗は悔しかったと思いますが、良い意味で傷を残すことはありませんでした。今大会3日目には驚くシーンもありました。第1打を谷に落とした後、歩いている途中で、相手は隣のホールの選手かラウンドリポーターではないかと思いますが、笑顔で話す姿があったのです。解説の中嶋常幸さんも「俺だったら、この場面では笑えないよ」と苦笑したほど、彼は自然体でした。緊張感漂う雰囲気に飲まれない性格なのです。

多くのプロたちに祝福された後、優勝スピーチでは観客やファンに感謝を伝えました。しっかり自分の言葉で話すチャンピオンには大きな声援がありました。今後の男子ツアーをけん引する一人になっていくことを期待しています。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

関連リンク

2019年 日本ツアー選手権 森ビル杯 Shishido Hills



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