日本ツアー初開催 ミャンマーOPで見たこと、聞いたこと、思ったこと<前編>
2016年 レオパレス21ミャンマーオープン
期間:02/04〜02/07 場所:ロイヤルミンガラドンG&CC(ミャンマー)
意外とある 日本ツアーとアジアンツアーのルールの違い
ミャンマーのロイヤルミンガラドンゴルフ&カントリークラブで開催中の「レオパレス21ミャンマーオープン」で、小池一平が思わぬペナルティを受けたのは、初日のことだった。
2番ホール(パー5)でグリーン奥からアプローチをしようとした際、ピンに向かう飛球線上には、大会に協賛するスポンサーの看板があった。日本でなら「動かせない障害物」からの救済を受け、ニヤレストポイントを決めてボールをドロップし、無罰でプレーを続けるのが大多数のケース。
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しかし、アジアンツアーではグリーン周りの看板は「動かせる障害物」と定めているケースが多い。小池も人の腰の高さほどある大きなボードを一度は移動させようとしたが、「みんなで動かそうとしたんですけど、ビクともしなくて…」と、ボールを拾い上げた。ところがドロップ位置を決める際、念のため競技委員を呼ぶと「この看板は動かせる障害物」と判断され、痛恨の1ペナルティを受けた。
「(競技委員は)杭か何かを蹴っ飛ばして『こうやって抜くんだ!』って言われました…」と、慣れない裁定、なんとも強引な“動かし方”に小池も思わずビックリ。ルールはルール。従うほかなかった。
今大会は前週の「SMBCシンガポールオープン」から続く日本ツアーとアジアンツアーの共同主管競技。4月には日本で「パナソニックオープン」も行われる。ゴルフは開催ツアーによってルールが異なる点があり、大会毎に“ホーム”のツアーのルールを採用。この2試合のアジアシリーズでは、アジアンツアーの規定に則っている。
そもそも、アジアンツアーではグリーン周りの看板はほとんどが「動かせる」ものであるという。選手がパットやアプローチをする際に、スポンサーのロゴを中継画面に映りこませて、露出を増やすのが目的。毎日、違うピンの位置に応じて、係員がラウンド前にボードの位置を移動させている。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)のマーケティング部国際担当・荒井成維氏が言う。「動かせる看板は日本にはほとんどありませんが、アジアとヨーロッパには多いですね。日本では日々のロケーション(ピン位置)を、競技委員が前日まで悩んで決めますが、こちらでは看板を動かす手配をするために、火曜日(開幕2日前)の午後までに『4ラウンド分のロケーションを出してくれ』という要求が来ることがあります」
看板のほかにも、日本を主戦場とする選手がアジアで犯しやすいほかのルールとして、排水溝(コンクリートのドブ)に入ったボールの処理というのがある。日本では排水溝に入ったボールは、拾い上げて無罰で救済を受けられるが、アジアンツアーではカート道路に隣接したものでない限り、排水溝はウォーターハザードと同じ扱い。つまり赤杭の中の池と同じで、1罰打を加える必要がある。
また、アジアンツアーではスロープレーに対する取り締まりが厳しい。組で最初にプレーする選手のストロークするための許容時間は、日本は50秒だが、アジアは40秒(パー3の1打目、アプローチ、パットは50秒)。罰打のほかに、シーズンを通して累積する罰金を科せられる(そうはいっても、ほとんどの日本人選手のほうが、他国の選手に比べてプレー時間は短いと感じられるのだが)。
アジアンツアーではプリファードライ(コースコンディションの不良で無罰でボールを拾い上げて汚れを拭き、プレースを可能にするローカルルール)を採用するケースも、日本に比べて多いという。
たった1打で生活が変わる厳しいプロの世界。昨今の日本企業の海外進出の流れもくみ、国内ツアーも今後いっそう世界との関わりを持つはずだ。主役となる選手たちは、不慣れなルールでも、その都度受け入れていく必要がある。
荒井氏は近年、海外メジャーでも競技委員を務める。「移動や言葉の壁への対応は、こういう場所ではより大切。少しずつ選手も慣れていかなければいけないし、乗り越えるたびにタフになっていくのではないかと思います」と、日本ツアーから羽ばたく人材に期待を寄せた。(ミャンマー・ヤンゴン/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw