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初勝利へ!単独首位の重永亜斗夢 自信「無いです」

兵庫県の山の原ゴルフクラブ 山の原コースで開催中の「つるやオープンゴルフトーナメント」。通算11アンダーの単独首位で3日目を終えた重永亜斗夢は、夢見心地で18番グリーンから降りた。昨年末の最終予選会をトップで通過した25歳。2位のマイケル・ヘンドリー(オーストラリア)に1打差をつけ、ツアー初勝利に王手をかけた1日だった。

上位に名を連ねる片山も、藤田寛之も、不満と余裕を持って終えたムービングデー。無欲の25歳は、その反面「3日目のこのプレーは大きいです」と精一杯、胸を張った。ショットの状態は決して良くない中で、8番までに3バーディを稼ぎ「68」でリーダーボードの最上段を譲らなかった土曜日。「問題は明日です。(キャリア初の)最終日最終組。本当はイヤだけど、それを経験できる。今日も『どうせここにいるなら、明日は最終組で』と思っていた」と、興奮を抑えるように話した。

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難病指定されている潰瘍性大腸炎に苦しむ重永は、お腹だけでなく、そのハートも人に誇れるようなものではない。「めちゃくちゃ緊張するんです。2日目の朝なんか、良い位置だったし、スタートの前に吐きそうになった」。今週、故郷の熊本には夫人と、1歳4ヶ月になる娘を置いてきた。会場で応援してもらうと、どうも力が出せない試合が続いているためだ。「試合に初日から連れてくるといつも成績が良くない。逆に和み過ぎるのか…」。

この日は自身が中退した日大卒の先輩、片山とのラウンド。永久シード選手とのプレーは、刺激的だった。「まず飛びますよね。飛びます。ボールがなかなか落ちてこない。高いボールも、こう、曲げるボールも、全部が上手いなあって。去年、片山さんのスイングをイメージして練習もしてたんですよ」。ラウンドを終え、スッと差し出された右手。深く頭を下げ、両手で包み込むようにして握った。夢中になり過ぎて、お近づきのチャンスも逸した。「『日大の後輩なんです』って言うの忘れてた…」

そんな謙虚な心の持ち主だから、このまま簡単に逃げ切れるなんて到底思わない。最終日最終組には片山に代わり、藤田が入った。歴代賞金王を倒す自信? 間髪入れず「無いです」と真顔で言い切った。「アマチュアだったら、滅多に一緒に回れない選手。しかもこんな良い位置でプレーしている時なんて絶対に無理でしょう?僕はプロですけどね、そんな気持ちで回っている」。それに「嫁が藤田さんの大ファンなんですよ!」

レギュラーツアーの通算出場試合は未だ20に満たない。鉄腕じゃない。1馬力だって出ない。心やさしい、人間の子。勝負の日曜日。重永亜斗夢は、真っ白な気持ちで地に付けた足を踏み出す。(兵庫県川西市/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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