第二の黄金期を迎えるマキロイが背負った“宿命”/進藤大典キャディ解説
PGAツアーの2021-22年シーズンが幕を閉じました。ロリー・マキロイ(北アイルランド)が史上初となる3度目の年間王者戴冠を達成。初日の出だし1番でいきなりOBを打ってトリプルボギー、ボギー、バーディ、ボギー、バーディ、イーグルと息をつく暇もないようなスタートからの優勝には、1997年の「マスターズ」で初日前半に「40」をたたきながらメジャー初制覇を成し遂げたタイガー・ウッズの姿が重なりました。
6打差でスコッティ・シェフラーを追う最終日、1番でボギーが先行する苦しい展開でした。世界ランキング1位を相手に大量ビハインドですから、一切のミスも許されないと自分自身を追い込んでしまうもの。大きかったのは、そのシェフラーもボギー発進となったことでしょう。痛恨の滑り出しから一転、かなり気持ちは楽になったはずです。
タフでチャレンジングな状況にあって力を発揮できるのがトッププレーヤーの証し。そして、相手が強ければ強いほど燃えるのがマキロイという選手です。これでもかと集中力を研ぎ澄ませ、シーズンを締めくくるにふさわしい最高のパフォーマンスを見せてくれました。
圧倒的に有利なはずのシェフラーがゲームの主導権を握れていないように映ったのは、マキロイが最大の武器である飛距離を生かしてアドバンテージを取っていたから。パー3を除く最終日14ホールのうち、セカンドオナーだったのは2ホールしかありません。ほとんどのホールでシェフラーのグリーンを狙うショットを見てから冷静に作戦を立てることができたのです。
ギャラリーの熱気が“マキロイ寄り”だったこともあり、シェフラーが感じたプレッシャーも相当なレベルだったと推察されます。リードしているにもかかわらず、アリ地獄にでもはまったかのように追い詰められていく苦しい精神状態。今季4勝と大ブレークを果たした26歳の勢いをもってしても、逃げ切るのは容易ではない状況でした。
良くも悪くも、今シーズンの大きなトピックは新リーグ「LIVゴルフシリーズ」との対立にあったといえます。その中で一選手の枠にとどまらない発信力を示し続けたマキロイ。PGAツアーのリーダーとして背負ったものは“責任”という言葉でも何だか軽い。もはや“宿命”に近いかもしれません。
聖地セントアンドリュースで行われた7月「全英オープン」が思い起こされます。2日目の最終18番に帰ってきたウッズの姿を見守り、自らはそのタイミングでスタートしていったマキロイ。PGAツアーのこれからを託すかのような構図に因縁めいたものを感じてしまいます。
今季3勝、ただ一人の4大メジャー全てでトップ10入りと高い次元の安定感を備え、選手としては第二の黄金期に入ってきた感もあります。やはり期待したいのは、2014年を最後に遠ざかっているメジャータイトル。生涯グランドスラムが懸かる来年4月の「マスターズ」は例年以上に楽しみな一戦となりそうです。(解説・進藤大典)