2022年 AT&Tペブルビーチプロアマ

203試合目の歓喜 トム・ホジーが貫いた堅実マネジメント

2022/02/08 14:30
モントレー半島財団理事の俳優、クリント・イーストウッド氏と記念撮影をするトム・ホジー(Jed Jacobsohn/Getty Images)

「AT&Tペブルビーチプロアマ」で初優勝を飾ったトム・ホジーがPGAツアーに初めて出場したのは2011年「RBCカナディアンオープン」でした。直前、3部ツアーにあたるPGAツアーカナダ「プレーヤーズカップ」を制してつかんだ切符でしたが、あえなく予選落ち。2部ツアーを経て2014-15年シーズンから最高峰の舞台へ本格参戦を果たしたものの、3季連続でシード確保に失敗。PGAツアー203試合目での初タイトルは、長い下積みが報われた瞬間でした。

通算200試合目までの最高成績は1度きりの2位(2019年「ア・ミリタリー・トリビュート at ザ・グリーンブライアー」)。それが2週前の「ザ・アメリカンエキスプレス」で自己ベストに並ぶ2位に入ると、間を置かずにペブルビーチで悲願の初V。前年大会で最終日最終組を一緒に回ったジョーダン・スピース、昨季年間王者のパトリック・カントレーといったスター選手相手に勝ち切ってみせたのです。

「パームスプリングス(ザ・アメリカンエキスプレス)の最終日前夜が一番眠れなかったかもしれない。きょうはとても落ち着いていた」「5番でダブルボギーを打とうが、ナイスパットを決めようが、その先にまたタフなショットが待っている。ただ頭を下げて突き進むだけなんだ。年を取ってくると、それがゴルフなんだと思うようになる」

優勝インタビューを聞いていると、直近の惜敗や過去の苦い経験を糧にしてきたことがうかがえます。幾度となく自らのプレーを振り返り、悔しさをかみしめてきたのでしょう。最終日のプレーからも、32歳の愚直な歩みを感じ取ることができました。

堅実がマネジメントでツアー初優勝を手繰り寄せた( Jamie Squire/Getty Images)

前半4番でバーディを先行させた直後、5番でまさかのダブルボギー。続く6番は2オンを狙えるロングホールです。フェアウェイのど真ん中から打ったセカンドで決して欲を出さず、グリーンに届くか届かないかという絶妙なクラブ選択でリスクヘッジ。花道からきっちりと寄せてバーディを奪い、悪い流れを断ち切ったことが大きかったと思います。

7番(パー3)も左奥に切られたピンに対し、安全なサイドに乗せてのバーディ。トラブルがあった前半をパープレーでしのぎ、サンデーバックナインに望みをつなげました。

優勝争いのメンツが絞られてくる後半、やはり緊張感は高まるもの。しかし、ホギーの攻め方は変わりません。インコースでの4バーディは、いずれもグリーンのセーフティなゾーンを狙っていった中で生まれました。

これまで逃し続けてきた初優勝がちらつき、リスク覚悟で果敢に攻めていきたくなる状況もあったはず。積み重ねた悔しさ、そこから得た教訓をぶれないマネジメントが証明しています。

優勝争いを演じたジョーダン・スピース(Jed Jacobsohn/Getty Images)

最後まで優勝争いを盛り上げたスピースも、上位に行けば行くほど集中力を高め、パフォーマンスを研ぎ澄ませていくあたりがまさにスーパースター。昨年9月に始まったシーズンではトップ10入りがありませんでしたが、昨年もこの時期から調子を上げて「マスターズ」前週の復活優勝につなげました。

次戦「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」も前年大会で最終日最終組を回っています。大会2勝の松山英樹選手をはじめ、さらに分厚くなるフィールドで熱い戦いを見せてくれるはずです。(解説・進藤大典)

2022年 AT&Tペブルビーチプロアマ