最終日最終組でもう一度 ジェイソン・デイの復活が見たい
「ファーマーズインシュランスオープン」はルーク・リストが初優勝を飾りました。ルーキーだった2013年にドライビングディスタンスで1位(306.3yd)に輝くなど、早くから注目された長距離砲。37歳となった今季も全体7位(316.7yd)につける飛距離を武器にツアー屈指のロングコースで知られるトリーパインズを攻略しました。
最終組から8組前と比較的プレッシャーもかからない位置で伸び伸びと「66」をマーク。昨季の新人王ウィル・ザラトリスをプレーオフで破るドラマは、遅咲きのキャリアを彩る感動的なシーンとなりました。
17年にこの大会でツアー初タイトルを掲げ、昨年6月に当地で開催された「全米オープン」を制したジョン・ラーム(スペイン)が1打差3位フィニッシュ。世界ランキング1位が地力と相性の良さを披露した試合で存在感を見せたのが、かつての世界ナンバーワン、ジェイソン・デイ(オーストラリア)です。
トップタイから出た最終日の後半14番でセカンドを放り込むイーグルを奪って首位に並び、久しぶりの優勝戦線に加わって見せ場を作りました。
2016年「ザ・プレーヤーズ選手権」では松山英樹選手が当時世界1位のデイと最終日最終組で対決。ビッグトーナメントで勝ち切る強さを目の当たりにしたTPCソーグラスでの18ホールだけでなく、何度も同じ組で優勝争いを演じました。
特徴的だったのはアドレス前にターゲット方向に正対してクラブを構え、目をつぶるルーティン。周りを引き込んでしまうような独特の世界を演出します。「フォーカスバンド」と呼ばれる脳波を計測するデバイスをいち早くトレーニングに取り入れたとされ、特にグリーン上で驚異的な集中力を発揮していたものです。
どこからでも入りそうなパッティングは、ライバルたちにとって脅威そのもの。タイガー・ウッズや宮里藍さんのような、誰もがうらやむ天賦の才と言っていいでしょう。それを磨く努力も一級品。一度、彼の家の練習環境を見せてもらったことがあります。3つのグリーン、砂質が異なる3つのバンカー、室内練習場…12歳で父親を亡くし、ゴルフアカデミーで出会ったコリン・スワットンさんと二人三脚で世界の頂点まで上り詰めた“アメリカン・ドリーム”がそこにはありました。
スワットンさんと袂を分かったのが2年前のこと。背中などのけがに苦しめられてきましたが、現在はかつてウッズのコーチも務めたクリス・コモさんに師事。スイングは以前よりも硬さがなく、背中に負担をかけない動きで滑らかになったように感じます。
昨年はヒゲがボリュームアップした時期もありましたが、イケメンのジェイソンは今くらいが一番カッコ良くて似合っていると思うのは僕だけでしょうか(笑)
イーグル直後の15番で3mを沈めたパーセーブ、2連続ボギーで後退しながら最終18番(パー5)をバーディで締めくくる底力に復活への期待値も高まります。まだ34歳。再び最終日最終組で松山選手と戦う姿を見たいプレーヤーです。(解説・進藤大典)