2021年 全米オープン

【進藤大典キャディ解説】全米オープンっぽくない? 開幕直前のトーリーパインズを歩いてみた

2021/06/16 09:45
専属キャディ時代、毎年訪れていたトーリーパインズ(写真は2018年「ファーマーズインシュランスオープン」)

今週、僕は仕事の関係で「全米オープン」が行われるカリフォルニア州トーリーパインズGCに来ています。せっかくなので現地から最新情報をお届けできればと思い、松山英樹選手のキャディとして戦っていたときのようにコースを歩いてチェックしてみました。

このサウスコースは「ファーマーズインシュランスオープン」の舞台として毎年のように訪れていた場所です。「全米オープン」をホストするのは2008年以来。ひざに痛みを抱えていたタイガー・ウッズがプレーオフ19ホール目でロッコ・メディエイトに競り勝った伝説の大会ですね。

「全米オープン」といえば、サディスティックなまでのセッティングが議論の的になるのが“恒例行事”。たたでさえツアー屈指のロングコースとして高い難度を誇ってきた18ホールが、どんなモンスターと化して選手たちを出迎えるのか興味がありました。

トーリーパインズGCサウスコース18番ホール(USGA/Kirk H. Owens)

実際の驚きは予想とは少し違っていました。第一印象として、例年1月末に回っていたときとあまり変わり映えしないのです。フェアウェイの幅がそれほどタイトになったとは感じませんし、月曜日(14日)の段階とはいえ、グリーンがものすごく速いということもありませんでした。

ただ、よく見ると1月に比べて芝が茶色くなっている部分が多いことがわかります。随所にワナも仕掛けられていました。

もっとも厄介そうなのはグリーン周りのラフ。これは“ヤバい”レベルです。かなり密集していて粘っこいだけでなく、ポアナ、ライグラス、キクユといろんな種類の芝が生えています。非常に難しい上、行った場所によってライの運不運が大きく分かれるかもしれません。地元出身でコースを知り尽くしているフィル・ミケルソンの練習を見ましたが、あのショートゲームの名手をもってしても、なかなか寄せの距離感を合わせられずに苦労しているのが伝わってきました。

一見大きく変わっていないフェアウェイのポイントはセカンドカット。伸びた芝の垂れている部分をザクッと切って作ってあるからか、芝自体が非常に元気です。ほぼ必ずボールがスポっと入ってしまうため、ラフからでなくても神経をとがらせることになりそう。グリーン周り、セカンドカットと今週はボールのライに注目です。

もともとポアナ芝のグリーンが悩ましいコース。一日経って火曜(15日)の時点でグリーンが硬くなった印象がありますから、週末に向けてどれだけ硬くなっていくかによって、全体のスコアも大きく変動するでしょう。午前の早い時間帯は朝露が降りる一方、最高気温が33℃くらいまで上がる日もあるとの予報です。大きな寒暖差の中でショットの距離感を合わせられるかもキーになります。

新型コロナから復帰したジョン・ラーム(Robert Beck/USGA)

2週前の「ザ・メモリアルトーナメント」で新型コロナ陽性の判定を受けて棄権していたジョン・ラーム(スペイン)が元気に練習していてホッとしました。あいさつすると、「ここで開催されるUSオープンをずっと楽しみにしてたんだ。出られて良かった!」とテンションも上がっている様子。彼にとっては4年前にPGAツアー初優勝を飾ったコースであり、妻のケリーさんにプロポーズした思い入れのあるサンディエゴ。初のメジャータイトルに向けて気合がみなぎっていました。

そのラームと一緒に回っていたブルックス・ケプカも、メジャーでは高確率で優勝争いに絡んでくる選手です。見ている限り、前週予選落ちを喫したのが信じられないほどショットの調子が良さそう。やはり大一番に照準を合わせてきたようです。1月に「ファーマーズ―」を勝ったパトリック・リードも「ことし優勝したコースだからチャンスはあるよ!」と力強く返してくれました。

特に今年に入ってからのメジャーは「マスターズ」での松山選手、「全米プロ」でのミケルソンとドラマの連続。今週はどんな名シーンが生まれるのか。直前に現地で味わうワクワク感は、やっぱりたまらないものがあります。(解説・進藤大典)

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