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【WORLD】USGAミュージアムで盗難事件

2012/06/20 22:26

Golf World(2012年5月28日号) GW bunker texted by John Strage

5月にUSGAミュージアムで発生した盗難事件にはベン・ホーガンゆかりの品もあった。※写真は1960年頃(Martin Mills/Getty Images)

いったい誰の仕業なのか。なぜこの事件ではこんなに複雑な事態となったのだろうか。犯人はなぜ、USGAミュージアムからこれらを盗んだのか、そしてそのモチベーションとなったのはいったい何だったのか、本当に理解に苦しんでいる。

事件があった5月16日の朝、犯人は斧を持って、ほんの数時間の間、ニュージャージー、ファーヒルズに侵入した。ゴルフ史に残る展示品の数々の中で、少なくともゴルフの歴史的観点からすればそこまで重要ではないもの2点(既に役目を果たし展示品となった全米アマチュア選手権トロフィー、そして1953年に同年に活躍したプロアスリートとしてベン・ホーガンに授与されたヒコックベルト賞)を盗み出した。

盗難を発見した元FBIシニア調査官で、国宝級の美術品やアートの盗難事件を専門に扱っていたロバート・ウィットマン曰く「ミュージアムでの盗難事件では、その88%が内部の人間による犯行」としているが、「今回の犯行現場を調査した限りでは、内部の人間の犯行ではない。外部の何者かが、これら特定の2点を何らかの理由から盗み出した」と主張している。

USGAの文化遺産盗難事件のセオリーは、歴史的な価値が高い為に被害に遭うのが常なのだが、もし今回の犯人の動機がそうであったとしたら、やや失望感が出てくる。盗まれたアマチュアトロフィーは1926年に作られたもので、1992年には役目を終えた金メッキ製だった。そしてヒコックベルトはレプリカなのだ。

確かにオリジナルのヒコックベルトは84オンスで、18カラットの金を含んでいたと言い、「5ポンドもの純金だった」と“Jewel of the Sports World”の著者スコット・ピトニアックも話している。その他にも「4カラット以上のダイヤモンド、ルビー、サファイア、そして26枚のダイヤチップが貼られていた」そうだ。これはフォートワースにあるコロニアルCCに展示されていたが、1980年に盗難被害に遭った。その1週間後には発見されたものの、1992年に再び盗まれ、それ以降発見に至っていない為、クラブがレプリカを作成した。しかし、ピトニアックは「レプリカは金メッキ製で、純金製ではないように見えた。しかも4と1/3カラットのダイヤモンドもルビーもサファイアも加えられていなかった」としている。

国際スポーツ遺産のエグゼクティブディレクターであり、元USGAミュージアム学芸員のカレン・ベドナースキーによれば、今回の事件のようなスポーツ博物館をターゲットにする犯行は珍しいという。彼女が思い出せるのはわずか100件のオリンピックメダル盗難事件だけ(のちに発見されたものだけ)のよう。ちなみに、その中には1924年に水泳選手だったジョニー・ワイズミュラーが獲得した金メダル、そして2004年に国際水泳殿堂入りを果たした際に授与した古代ギリシャ時代のメダルを再現したものも含まれている。

USGAは今回の事件後、博物館内の警備システムに関しては、スポークスマンのジョー・グーデが「盗難防止の為に設計されたもの」としか声明を発表していない。こうした盗難事件後に盗まれた展示品が発見される確率は約90%と高く、ウィットマンは「特徴のある文化遺産であれば(発見の)可能性は高い」と語る。

しかしながら残りの10%は発見されないわけで、ニュージャージーにあるSomerset County Crime Stoppers社では、犯人逮捕に結びつく盗まれた2点に関する情報、犯人に関する情報提供に5000ドル(約40万円)の賞金をかけると発表。同社は1992年の盗難事件でも同額の賞金をかけて情報を求めたが、いまのところ有力情報は一切集まっていない。

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