古江彩佳の厳選クラブセッティング メジャーは「勝って当たり前」だった
◇女子メジャー第4戦◇アムンディ エビアン選手権 最終日(14日)◇エビアンリゾートGC（フランス）◇6523yd（パー71）
古江彩佳を支える用具担当者たちは、焦りに焦っていた。日本人史上4人目の女子メジャー制覇の快挙を遂げる約1週間前、渡仏した古江のキャディバッグはまだ日本にあった。
荷物の運搬トラブルに遭遇し、使い慣れたクラブでプレーさせるのをあきらめ、新たにフランスに送るスペアのギアを「かき集める寸前までいっていた」とブリヂストンのスタッフは明かす。
なんとか開幕3日前の8日（月）に到着して事なきを得たが、バッグの中には今大会で初めて使用することになる新作ウェッジもあった。バックフェースに「BITING SPIN」と刻印されたプロトタイプで、思わぬ形で事前準備の時間が短くなったにもかかわらずロフト50度、54度の2本を投入。さっそく、生命線のショートゲームの助けになった。
米ツアー3年目の今季、持ち前のショットの正確性に加えて、飛距離がわずかでも伸びたことがシーズン半ばにして9回のトップ10入り、そしてメジャー初優勝にも繋がった。昨季245.44ydで全体142位だった平均飛距離はことし、250.75yd（122位）と5yd以上アップ。シーズンの初めにスイッチしたB3 MAX ドライバーは、試作段階で古江がいち早く太鼓判を押していたという。
「すごく気に入っていただいて、『早く（R＆A、USGAの）承認が下りてほしい』と言っていた」と語るのはブリヂストンのクラブ担当・中原創一郎氏。決め手はスピン量の減少だった。
「古江選手は米ツアーに参戦してから当たりが強くなり、その反動でクラブが上から入るようになったことでドライバーのスピン量が（毎分）3000回転近くなっていた」。高慣性モーメントを維持しつつ、重心を少し前に移動させた今作に替えたことで2500回転以下に減り、球の無駄な吹き上がりを抑えられるようになった。
昨年まで他社製品を握っていた5UTも同じB3 MAXに変更。かねて好んでいたフック気味のフェースアングルから、スクエアなタイプを選ぶようになったのもここ1年程のことだ。グリーンを狙い、球を止めるクラブは「米国で戦うためにより強く、スピンの効いた球を打ちたい気持ち」の表れ。プレーヤーの進化と、メーカーの設計意図がぴったり重なった。
かつて、宮里藍さんを米ツアーでもサポートした中原さんは、クラブ選びをする古江について「一番“ウルサイ”選手のひとりです」と笑う。「ロフトやライ角、長さ、重さのちょっとした違いに気づく。それはスイングがしっかりしているからなんです。もちろん、クラフトマンはどの選手のクラブも気を引き締めてつくりますが、古江選手のクラブのときはいつも以上に細かくなります」
ギア選び、そして転戦中の毎日の姿は「タフという言葉に尽きる」。試合前は誰よりも練習ラウンドを行い、試合を想定したコースチェックを入念にこなす。筋力トレーニングをほとんどしないコンディション調整の方法も独特で、153cmの小さな身体にはブレない心の強さがある。
1カ月半前、6月のメジャー「全米女子オープン」の期間中、中原さんはコース外でたまたま見かけた古江に驚いた。「珍しく早くゴルフ場から帰ったと思ったら、ホテルの周りを微笑みながら走っていて（笑）。走るのすら本当に楽しそう。勝つための準備をストイックに、それを悲壮感なくやっているのがスゴイと思います」。だから、惜敗続きだったシーズンを振り返っても断言できる。「“勝って当たり前”だと思いますね」。ビッグタイトル獲得は必然だった。
＜アムンディ エビアン選手権のクラブセッティング＞
ドライバー：ブリヂストン B3 MAX(9.5度)
シャフト：藤倉コンポジット SPEEDER NX GREEN (長さ45.25インチ、重さ50g台、硬さS)
フェアウェイウッド：ツアーB JGR(3番15度)
シャフト：SPEEDER NX GREEN（43インチ、50g台、S）
フェアウェイウッド：B2HT(7番21度)
シャフト：SPEEDER NX BLACK(42インチ、50g台、S)
ユーティリティ：B2HT ハイブリッドユーティリティ(4番22度)、B3 MAX ハイブリッドユーティリティ（5番25度）
シャフト：藤倉コンポジット MCH(60g台、S)
アイアン：221CB(6番～PW)
シャフト：藤倉コンポジット TR PROTO(85g、S)
ウェッジ：ブリヂストン プロトタイプ(50、54度)、BRM2（58度）
シャフト：MCI ソリッド/マイルド ウェッジシャフト (85g、S)
パター：テーラーメイド スパイダーツアーX
ボール：TOUR B XS