米ナンバーワン女子プロは家族も彼氏もアスリート ネリー・コルダ<LPGA選手名鑑>/片平光紀解説
15人の日本勢も出場する「全米女子オープン」(ノースカロライナ州パインニードルズ・ロッジ&GC)で、現在の米国ナンバーワンプレーヤーが帰ってきます。ネリー・コルダ選手は2022年、開幕戦から3試合に出場後、突然発症した病によって離脱していました。
フロリダに滞在中、ワークアウト中にふと腕に異変を感じたそう。腫れが引かず病院で検査を受けると、鎖骨下静脈の血栓によるものだということが発覚しました。4月に手術を受け、療養を経て、このメジャーでカムバック。昨年6月末から守ってきた世界ランキング1位の座はコ・ジンヨン選手(韓国)に譲りましたが、依然として2位にいます。
■両親と弟はプロテニスプレーヤー
ネリー・コルダ Nelly Korda
◆生年月日 1998年7月28日
◆出身 米国フロリダ州ブラデントン
◆ルーキーイヤー 2017年
彼女のバックグランドを知る上で、家族の話は欠かせません。両親はチェコ出身の元プロテニス選手。父ペトル・コルダさんは1998年の「全豪オープン」で優勝し、男子シングルスの世界ランク最高2位まで到達。母レギナ・ライフルトヴァーさんも1988年の「ソウル五輪」に出場した選手でした。
弟のセバスチャン・コルダさんもテニスのプロとして活躍中。そして、もちろん姉のジェシカ・コルダ選手こそがネリーがキャリアを始めたきっかけでした。幼い頃からどこへ行くにもお姉ちゃんの後を追い、コースで真似をしているうちにゴルフの道へ。3きょうだいは世界中を転戦しながらグループチャットで連絡を取り合う仲良しです。
■姉ジェシカの背中を追って
2011年にLPGAツアー入りした姉の後を追い、ネリー選手はプロ転向初年度の16年に米下部ツアーで1勝、賞金ランキング9位に入って翌年レギュラーに昇格しました。
ルーキーイヤーの2017年、トップ10入り5回でシードを確保。イーグル数は全体2位、パー5の平均スコアは3位というドローボールの飛距離を持ち味にしたゴルフを展開します。初勝利は2018年の「スウィンギングスカート台湾選手権」。LPGAツアーでともに優勝した史上3組目の姉妹になりました。
同年からキャディを務めているジェイソン・マクデードさんはツアー1勝のカロリン・マソン選手(ドイツ)の夫で、かつて野村敏京選手やリゼット・サラス選手をサポート。ネリーとも強い信頼関係を築いています。
調子が良くない時も、彼はいつもポジティブで、たわいもないジョークを飛ばして選手が笑顔でいられるよう心掛けているそう。ちなみにその台湾での初優勝時、プレーオフの相手は妻のマソン選手でした。複雑な気持ちを抱えながら、仕事とプライベートをきっちり分けてタイトルを手に入れたのです。
■ボーイフレンドはホッケー選手
2019年は2勝、コロナ禍でゼロ勝だった2020年を経て、2021年に世界一にたどり着きました。「ゲインブリッジ選手権」、「マイヤーLPGAクラシック」に続き、6月の「KPMG全米女子プロ」でメジャー初優勝。米国人選手が世界ランク1位に立つのは2014年のステーシー・ルイス以来でした。
さらに8月の「東京五輪」で金メダルを獲得。LPGAツアーでは「ペリカン女子選手権」でシーズン4勝目を飾りました。
欧州男子ツアーの選手だったデビット・ウィーラン氏に以前、マネジメントや練習方法を教わり、今はショートゲームを中心にレッスンを受けています。一方で昨秋からジェイミー・マリガン氏にスイングのコーチングを依頼。姉のジェシカと親交のあるパトリック・カントレー選手の紹介でつながり、ポジティブな性格に惹かれて契約しました。フィジカルトレーナーはジャスティン・トーマス選手らを指導するコルビー・ウェイン・トゥリエー氏に師事しています。
ボーイフレンドのアンドリアス・アタナシウさんはカナダ出身、NHLロサンゼルス・キングスでプレーするアイスホッケー選手。ホントに周りはトップアスリートばかりで、ゴルフのプレーも速いのですが、性格はとってもマイペース。ジェシカとは真逆で感情をあまり表に出しません。
優勝争いを控えた最終日でも、朝食をのんびり取って、1時間も練習しない朝もあるほど。試合中にリーダーボードを見るのは「ジェシカのスコアをチェックするときだけ」と言います。