自己最高の2位入賞 蛭田みな美を導く1日10分のパター練習
国内女子ツアーにフル参戦1年目。開幕戦から全試合に出場している蛭田みな美は、14試合目を数えた前週の「ヨネックスレディス」で2打差の2位に入り、プロとしては初のトップ10フィニッシュと、自己最高の順位を記録した。試行錯誤のツアールーキーを導いているのはアマチュア時代からの習慣だ。
19歳の蛭田を相手に“昔話”を聞いたのは、国内女子ツアー「中京テレビ・ブリヂストンレディス」の時。蛭田は同大会と同じ中京GC石野コースで開催される「トヨタジュニアW杯」に出場し、女子のキャプテンを務めた2015年大会では団体戦優勝を経験していた。やはり「鮮明に覚えている」瞬間があるという。
プロの大会では9番ホールとして設定される525ydのパー5が、その時の最終ホールだった。フェアウェイを横断するハザードを前に、最終日の蛭田は2mのバーディチャンスにつけた。「トヨタジュニアW杯」は個人戦、団体戦で争われ、3人のスコア合計で争う団体戦では、1打がチームメイトのスコアを救う結果にもなるため最後まで緊張を緩めることはできない。
「これだけは絶対に入れたいなと思って」。しっかり打ち切るとスライスフックのラインに乗ってカップを鳴らした。この日の日本チームで唯一のアンダーパーとなるパットで逃げ切り優勝。個人戦は3位と満足のいくものではなかったが、「得意というわけじゃないけど、パターをずっと練習してきました。だからあれが決まった瞬間はすごくうれしくて」。プロとして初優勝を目指す現在につながる“確信”の一打となった。
小説、ノンフィクション作品などジャンルを問わない読書家は、中学時代に読んだ一冊がきっかけで練習熱心になったという。スポーツ選手の名言を集めた書籍で大リーグ・イチロー選手の『小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています』という言葉に触れ、感銘を受けた。
「ちょうどプロを意識し始めていた時期だったし、わたしには何が続けられるだろう?と考えた。パターなら毎日できるかなと」。
陸上部に属した中学時代からきょうまで1年間でパターを握らないのは10日程度。ショット練習を行わない日でも、父が用意した自宅のパターマットで球を転がした。「(漫然と)続けていくと感覚が鈍るのも嫌になってきた。父に言われて練習するのではなく、自分からやっていましたよ」と胸を張る。
「だからあのバーディパットが決まった瞬間はやけにうれしくて。実際には、あれで優勝が決まったとか劇的なモノではなかったんですけどね(笑)。団体戦で燃えていたっていうのもあったのかな」
小さな努力は小さな成功体験を生み、大きな目標へ向かう原動力になる。「ゴルフは個人種目で、怒ってくれる人とかも少ないですしね。もちろんやることをやった上で、ですけど、日々の小さな練習を欠かさずに積み重ねることでプロになれたと思っています」。
ルーキーイヤーの今年は、すでに6度の予選落ちもあり、プロの世界の厳しさを痛感している。話を聞いた「中京テレビ・ブリヂストンレディス」も、開幕前日に誰もいなくなるまで練習場で調整に励んだが、予選落ちだった。
信じたことを腐らずに続けていく。プロ転向後もアマチュア時代からの習慣を続けている蛭田にとって、自己最高順位もまた大きな前進力となるに違いない。(編集部・林洋平)