アマ・その他ツアー

あの時の自分へ「仲間と過ごした時間は財産」~原江里菜

2016/06/08 07:45
笑顔のプレーがトレードマーク。アマ時代には激しいライバル意識を燃やし、力を培った

プロゴルファーになるためには今なにをしたらいいですか? ジュニアのレッスン会に参加した多くのプロたちが直面する、よくある質問のひとつだ。将来への希望や期待が大きいほど、少年少女の悩みや不安は大きくなるもの。いつだって先人の話は救いになる。ジュニア時代から華々しい活躍を見せてきた原江里菜に「あの時の自分へ」というテーマで、自身のゴルフ少女時代を振り返ってもらった。

「アドバイスできるとしたら、トレーニングをしっかりしておくことと、英語をもっと勉強しておきなさいっていうことですかね…」。話を聞いたのは、1日36ホールの日本予選を勝ち抜き、自身初となる海外女子メジャー「全米女子オープン」(7月7日開幕、コーデバル=カリフォルニア州)出場を決めた直後。原の話がそこから始まったのも無理はない。

かねてから語っていた米ツアー進出という将来の夢。「挑戦する時期が来たら…」と機をうかがい続けてプロ生活も10年目に入った。2009年の「エビアンマスターズ」、2012、14年の「全英女子オープン」など海外での試合も経験してきたが、そのたび“語学力”と“基礎体力”の問題に直面している。

「高校時代は特に(自由な)時間があった。夕方6時に練習を終えて、就寝まではもっと有意義に使えたはず。でも当時は部屋でゴルフの話、友達の話に明け暮れて・・・それでも、いま振り返れば、仲間と過ごした時間は貴重で幸せだったかな」

少しの後悔はあっても、決して、無駄な時間を過ごしてきたとも思っていない。愛知県豊田市の実家を離れて入学した東北高(宮城)時代は寮生活。切磋琢磨しあった時間、そして仲間の存在については「わたしの一生の財産」と断言する。

寮には、2学年上の最上級生には宮里藍、そして同学年には有村智恵らがいて苦楽を共にした。「雲の上の存在だった」という宮里が高校3年でプロツアーを勝った際の衝撃はいまも鮮烈だ。「同じ土俵に上がれるのか」と気後れも感じながら、可能性を体現してみせた先輩の背中を夢中で追いかけた。だから同い年の有村には「絶対に負けたくなかった」。強いライバル心を練習のモチベーションとした。

出場したジュニア大会でもライバルは多かった。高校2年時に出場した2004年「全国高等学校ゴルフ選手権」では、すでにプロツアーで優勝争いを見せるなど当時圧倒的な強さを誇っていた1学年上の諸見里しのぶに競り勝ち、逆転で優勝を果たした。「自分もプロになれるかもって。プロの世界で通用していた選手に勝ったっていう事実が、手応えになったのは確かです」。それまで漠然と描いていたプロゴルファーへの道筋を明確にした出来事だった。

「本当に素晴らしい人たちに囲まれていた。自分が目指すべき姿を示し続けてくれた人たちが、そばにいてくれて良かったなと思う。今振り返れば、こうしていれば良かったということもあるけど、それでも自分の過ごしてきた時間は間違っていなかったと、胸を張って言えますね」

プロ転向後は2008年の国内女子ツアー初優勝から、昨年のツアー2勝目まで約7年の時間を要した。そんな原の感謝の言葉には、揺るぎない実感がこもっていた。後悔先に立たず――とは言うけれど、その時、そのタイミングでしか得られない何かもきっとあるのだ。(編集部・糸井順子)