「いま僕はココにいます」Vol.161 タイ編
人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・29歳。2012年のプロデビューから活躍の場を海の向こうに求め、キャリアで足を運んだ国と地域の数は実に70に到達した。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。
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プロゴルファーの川村昌弘です。
いま僕はバンコクにいます。
欧州ツアー(DPワールドツアー)はアジアンスイングの2戦目「タイクラシック」です。前週のシンガポールからは直行便で約1時間半のフライト。シーズン中の数ある移動の中では、もちろんラクちんな部類に入ります。
会場のアマタスプリングCCには、バンコクのホテルからレンタカーで約1時間かけて通勤します。多くの外国人観光客が宿泊するダウンタウン中心部は渋滞がもはや名物と言えるエリアで、拠点にすると特に帰りが大変です。「あと5kmで到着」と思ったところから、1時間かかることも珍しくありません。その辺は心得たもので、町の少し外れをチョイスするのが僕たちにとっては“正解”です。
このコースでの大会に来たのは2018年12月の親善試合以来。とはいえ、それ以降もプライベートで結構ラウンドしていて、僕にとっては海外でも知り尽くしたコースのひとつです。アジアンツアーでプレーしていた時には当地での試合によく出場しました。
「全英オープン」の予選会で負けた悔しい記憶もありつつ、当時20歳で出た2013年の「タイランド選手権」が、特に思い出深い。最終日にバッバ・ワトソンと同組になり、興奮しました。ワトソンはこの年の春に初めて「マスターズ」を制したばかりで、まさに全盛期でしたから。
実績ではかなわない…と理解しつつ、当日は僕が「70」でワトソンが「72」。順位も18位と30位で、「今週だけなら勝ったぞ!」と、ひとり喜んだのを覚えています。初々しかった…。
時の流れは早い――。そんな話を今週、学生時代の恩師としたばかりです。福井工大福井高の理事長(学校法人金井学園)、金井兼さんとバンコクで再会しました。福井工大にはタイの学校との交換留学制度があり、ゴルフ部の監督でもあった理事長先生がちょうどバンコクのオフィスを訪問中。一緒にお寿司をいただいてきました。
高校3年生の時、卒業後のプロ入りを志望していた僕を先生は完全サポートしてくれました。ゴルフ部の団体戦があるにもかかわらず、日本ツアーの予選会突破を第一に優先するよう後押ししてくださったおかげで、今の自分があります。卒業してからもう10年以上。今も気にかけてくれる先生に感謝しています。