2016年 WGCキャデラック選手権

<番外編・選手名鑑189>トランプ氏とゴルフのただならぬ関係(前編)

2016/03/07 16:00
いま世界で最も注目を集める男ドナルド・トランプ氏(Jabin Botsford/The Washington Post via Getty Images)

■ Super Trumpゴルフ界を席巻

いま世界で最も注目を集める男ドナルド・トランプ氏(69)は、実業家、人気テレビ番組出演のタレント、自叙伝などの作家といくつもの顔がある。そのひとつがゴルフ業界の風雲児だ。米国大統領選での快進撃は、ゴルフビジネスでの成功が大きく後押ししたと言っても過言ではない。ゴルフビジネスで得た潤沢な資金、試合中継などメディア活用によるPR効果、圧倒的に共和党支持者が多い米国ゴルフ界の人脈は多大な影響を与えている。

トランプ氏は不動産業で成功し、巨万の富を得た。類まれな商売人の嗅覚が、次にターゲットにしたのはゴルフ関連ビジネス。あっけにとられる猛スピードで次々と超名門ゴルフ場を買収していった。彼はまず、世界の主要ゴルフ団体のトップたちと親しくなり、その先のビジネスを見越して、世界最大の規模を誇るPGAツアーのコミッショナーとの距離を縮めていった。アリゾナ州在住のゴルフ場評論家の僕の友人(米国人)は、トランプ氏から「私のプライベートジェットを自由に使って視察をして助言してくれ」と依頼を受けたという。トランプ氏は時に彼に同行し、レクチャーを受けるなど数年間かけてゴルフビジネスを猛勉強。このように各分野のキーパーソンから、珠玉のエッセンスを吸収していった。

完璧な人脈を築き、多くの貴重な情報を得ると、本格的にゴルフ場買収へ乗り出した。米国内にとどまらず、中東ドバイ、スコットランド、アイルランドなど…。大統領就任を予定?しているのか、すでに首都ワシントンD.Cのポトマック川近くにも素晴らしいコースを所有している。

買収後は本領発揮。儲けの法則を熟知しているトランプ氏は見事に実践していった。所有コースは20に満たないが、数より質を追求。そのまま営業しても十分ビジネスになると思われたが、超名門コースに巨額を投じ、自分好みに磨き上げた。

■ 豊臣秀吉もビックリ? ゴルフ場も“キンキラキン”

トランプ氏所有のゴルフ場の評価や趣味は、好き嫌いが分かれる。ゴルフ場名に必ずといっていいほど自身の名をつけるだけでなく、ド派手でゴージャス感たっぷり。彼が所有する最も有名なビル、ニューヨーク五番街にゴールドの輝きを放ちそびえ立つトランプタワーを思い起こさせる。

クラブハウスは、ゴールドを基調にしたデザインに改装し結婚式やパーティー会場にも活用。高級リゾートにバージョンアップした併設ホテルには、世界のVIPが家族を伴い休暇にやってくる。コースはジャック・ニクラスらレジェンドだけでなく、新進の設計家らにも依頼して付加価値を加える。歴史ある名門コースにはあまりなかった300ヤード級の芝から打てる大練習場も設営し、ゴルファーは大満足だ。メンテナンスも怠りなく「ここぞ!のツボ」をすべて押さえた彼の戦略には、思わず脱帽する。自身も現場で陣頭指揮を執るが、成長した子供たちも責任者となり、今ではファミリービジネスである。

所有コースはプロゴルフツアーの舞台にもなり、世界へテレビ中継されるたびにコマーシャルを超える宣伝効果は絶大。映るであろう場所にTRUMPの名を花で描いたり、看板を掲げたりして「トランプはゴルフのホッテスト・ブランド」だと人々の脳裏に刻みこんでいった。

■ ゴルフは大学生から レッスン経験なしでシングルへ

トランプ氏が初めてゴルフをしたのはアイビーリーグのペンシルバニア大学ウォートンスクール(ビジネススクール)時代。学友たちがそろってゴルフ好きで、誘われてプレーしたという。少年時代は野球やフットボールに夢中で、初めてクラブを手にしたのは遅かったが、誰より夢中になった。大学のあるフィラデルフィア近郊の芝がめくれた地面からティショットするようなパブリックコースで頻繁にプレー。出発点は現在、彼が所有するゴージャスなゴルフ場と対極で、学生時代の経験が「理想のコース像」の源となった。

友人のプレーを見よう見まね、レッスン書を読み漁り、スイングを構築。インストラクターの指導を受けることなく上達し、シングルの腕前となってクラブチャンピオンにも度々輝いた。

いまから3年前のハンディキャップは5、生涯ホールインワン5回、年間ラウンド数75回以上。しかし、その後は多忙を極め、プレーする機会が激減した。そのストレスからか、昨年末にはバラク・オバマ大統領について「オバマ氏は年間250ラウンドしていると聞く。2015年のタイガー・ウッズよりもゴルフをしているじゃないか。私もゴルフが大好きだが、我々はそんな時間はない!」と、腰の手術を受けリハビリ中のウッズを引合いに出し批判。これにはウッズも唖然呆然だったに違いない。

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