復活優勝に導いたパター PGAツアー2023年ギア10大ストーリー(前編)
2023年はゴルフギア界にとって多忙なシーズンだった。興味をそそる話の数々、学びの時間、単純明快にクールなアイテムなどが詰まった盛りだくさんの一年から、我々GolfWRX.comはことしのギア10大ストーリーをピックアップ。まずは前編として、ホットな話題を提供し続けたパターなど5選を紹介する。
キャリアを復活させたパター
カムバックにまつわる話は、スポーツの最上に位置する。そして、そこにゴルフギアが関わっていると、ストーリーはより良いものとなる。では、ルーカス・グローバーとカミロ・ビジェガス(コロンビア)のキャリアに焦点を当ててみよう。両者はともに、全盛期はゴルフ界で最高の選手の一人と考えられていたが、その後の困難な時を乗り越え、23年に再びPGAツアーで優勝を果たした。
2009年の「全米オープン」王者であるグローバーはこれまで驚異的なボールストライカーであり続けてきた。ドライバー、ロングアイアン、ショートアイアンのショットはもとより、ウェッジのプレーでさえ、キャリアを通じてPGAツアーにおけるトップクラスの選手であり続けてきた。
しかしながら、パッティングの苦悩もまた、同様にコンスタントなものだった。色々と異なる手法を試したものの、どれも13年に端を発したイップスとの苦闘を解決してくれない。長尺パターへの変更は、彼にとって最後のオプションの一つだった。ことしに入り、ついにその決断を下すと、効果はすぐに好成績に結びつき、複数回の上位フィニッシュを遂げた末、8月の「ウィンダム選手権」と「フェデックスセントジュード選手権」を連続で制覇した。
グローバーは、「何かを変えなければいけないと意を決したんだ。(長尺パターに)替えようと思っていたところだったし、これがしっくり来なければ、左打ちを試そうとさえ思っていた。そこまで追い詰められていたんだ。何をやっても上手くいかなかった。どんな練習も実を結ばなかった。とにかく、脳が麻痺していたんだ」と述べた。
グローバーは6月の「メモリアルトーナメント」にて、L.A.B.GOLF「MEZZ.1(メッツ1)マックスパター」を試し始めた。これは、22年にアダム・スコット(オーストラリア)が有名にしたパターで、スコットと全く同じ長さと仕様のものを注文した。
「メモリアルへ持って行ってみると、パットの調子が良かった。私のミスは、いかれたような、不恰好でイップス的なストロークによるものではなかった。ミスは、単にミスだった。そして、それは良しとできるものだった。要するに、これは完全に新しい運動技能なんだ。かなり違うものだから。私のやっていたことからは、かけ離れていたんだ」とグローバー。
ビジェガスもスコットからアドバイスを受け、魔法ならぬL.A.B.の杖とともに、フェデックスカップ・フォール(秋季シリーズ)で躍進を遂げた。
「バターフィール ドバミューダ選手権」での優勝後、ビジェガスは冗談交じりに「確かに、ある意味、僕はアダムにお礼を言わなければならないかもしれない。僕らは『プレジデンツカップ』前にクエイルホローへ行ったのだけど、その時アダムがあのブルームでパットをしているのを見たんだ。彼はかなり良い感じで転がし続け、どれだけ自分のフィーリングに自信を持っているかについて語り続けていたんだ」と述べた。
結果的に、スカウティングのためのクエイルホロー行きが、ビジェガスにとって9年の無勝利期間に終止符を打ち、PGAツアー5勝目を挙げるための助けとなったのである。
10年物の7番アイアンに5万ドルの値
マイケル・ブロックが「全米プロゴルフ選手権」で見せた普通ではありえないような快進撃の余波は、使用する10年物のテーラーメイド製アイアンをことし最も興味を引いたギア関連のストーリーへと変貌させた。
オークヒルでの最終ラウンドに15番(パー3)でホールインワンを達成したブロックは15位タイでフィニッシュし、バルハラで開催される来年大会の出場権を獲得した。PGAオブ・アメリカに所属する46歳のプロは、ロリー・マキロイ(北アイルランド)と同組でそれを達成したのである。
ブロックがホールインワンを決めた、14年から使用するテーラーメイド「ツアープリファード MC」の7番アイアンは大きな注目を集めた。ブロックはこのクラブに対し5万ドルのオファーを受け取ったほか、多くの博物館やギャラリーが興味を示した。
しかしながら、ブロックは翌週の「チャールズ・シュワブチャレンジ」でも、このクラブを使い続ける決断を下した。10年にわたり使い続けるこのクラブについて、その後、最新テクノロジーよりも手馴染みの良さを気に入っていると述べている。
これはイカしたギア関連のストーリーであり、もっと大きな枠組みで語られるべき、会心のスポーツストーリーでもあった。
「ジェイルバード」が合言葉に
分厚い鉛テープが貼られ、長尺のスーパーストロークグリップでカウンターバランスに仕上げられたオデッセイ「VERSA JAILBIRD(ジェイルバード)パター」は、間違いなく2023年における最もホットなクラブのひとつであり、そのトレンドは現在も継続中である。
その功績の大部分は、1月「ザ・アメリカンエキスプレス」にて、キャディであるリッキー・ロマノのパターを実戦投入したリッキー・ファウラーに帰している。このパターを気に入ったファウラーは、自分用に一本入手することを決めたのだ。
その後、オクラホマ州立大時代の後輩にあたるウィンダム・クラークも、自分用に同じパターを手に入れた。このパターは、2人が「全米オープン」日曜日の最終組でプレーした際の焦点となり、最終的にクラークが制覇した。また、今シーズンはキーガン・ブラッドリーも同じパターを使用し、4年間の無勝利期間に終止符を打って2勝を挙げている。
マーケティングの天才であっても、このパターを売り出すにあたり、これほどの筋書きは描けなかっただろう。何しろPGAツアーの選手たちは、今でもこのパターの利点についてテストを重ねており、成功に結びつけているのである。
姿を消したブレードアイアン
ブレードアイアンが超一流のボールストライカーに恩恵を授けているのは疑いようのない事実であり、最高峰の選手たちのショットメイキングにおける究極の精度、弾道およびスピンコントロールの実現をアシストしている。また、伝統的な職人技、最高の打感、真の芸術性という観点から、ゴルフギアを代表する存在となっている。
しかしながら、昨今はキャビティバックアイアンが、プロフェッショナルのランキングにおけるブレードアイアンの地位を侵食し続けている。今季は数多くの選手がブレードからキャビティのテクノロジーに乗り換えた。中でも目を引いたのは、ファウラー、ウェブ・シンプソン、クリス・カーク、スコットのアイアン変更である。
また、ブレードとキャビティの両アイアンで構成される複合セットも、年々人気を増している。トッププレーヤーでは、マキロイ、マックス・ホマ、コリン・モリカワらが使用している。
スコッティ・シェフラーの13本
スコッティ・シェフラーは23年のPGAツアーにおいて、平均スコア、ストロークゲインド・トータル、ストロークゲインド・アプローチ・ザ・グリーン、ストロークゲインド・オフ・ザ・ティ、ストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーン、グリーンズ・イン・レギュレーション(パーオン率)でトップに君臨した。
シェフラーは藤倉コンポジット「ベンタス ブラック」7Xシャフトの装着されたロフト角8度のテーラーメイド「ステルス2 プラス ドライバー」を使用している。また、15度にセットされたテーラーメイド「ステルス2 フェアウェイウッド」に加え、鉛テープで重量を加えた2本のダンロップ「スリクソン Z U85 ユーティリティ アイアン」(3番、4番)を活用している。
5番アイアンからピッチングウェッジにかけては、タイガー・ウッズとテーラーメイドが共同設計した「P7TWアイアン」を使用。3本のウェッジはタイトリスト「ボーケイ」(60度はローバウンスのTグラインド)をバッグに入れている。
シェフラーはこれらクラブでは滅多にミスをしない。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)