アダム・シェンクが2つのキャディバッグで転戦するワケ
PGAツアーの選手たちは、毎週異なるコースから絶えず変化する天候まで、無数の可変的要素と対峙する。彼らが余分にクラブを持って転戦するのが珍しくないわけは、ここにある。
例を挙げると、ジョン・ラーム(スペイン)は風が強まり、低弾道ショットが必要となる場合に備え、5番ウッドの代替としてドライビングアイアンを携帯している。同様に、コリン・モリカワはバウンス角の異なる複数のロブウェッジを持って転戦しており、各週のコースセッティングに最適な一本を選択できるようにしている。恐らく誰であれ、オプションとしての控えクラブを1本はバッグに入れて転戦しているであろう。
PGAツアーの選手がUSGA(全米ゴルフ協会)のルールで決められた14本のみではなく、15あるいは16本のクラブを持って転戦しているのは一般的なことである。しかしながら、アダム・シェンクはそのアプローチを極限まで振り切っている。初出場を果たした今週の「ツアー選手権」においても同様だ。
実のところ、シェンクはあまりに予備のクラブが多すぎるため、キャディバッグ1個では収まりきらず、2個で転戦している。
「僕は他のほとんどの人よりちょっと多めにギアを持って移動しているね。僕はこれが楽しいんだ。正直言って、プレーするより楽しいかもしれない」とシェンク。彼はショットメーカーであり、その強みを生かすためにキャディバッグの中身をセットアップしており、異なるコースやコンディションに合わせるために複数のドライバーを持っている。
シェンクはGolfWRX.comに、「僕はそれぞれ(のドライバー)を違うように(セットアップ)しているんだ。ドロー用の物があればフェード用の物もあるし、どちらを打てる物もある。高弾道用も低弾道用もあるね。ゴルフコースの“声”に応じて合う物を選んでいる。もし自分がスライスしていれば、少し向きを変えるためにもっとロフトのあるドライバーに替えるかもしれない」と述べた。
とはいえ、彼が数多くのクラブと転戦する理由はそれだけに留まらない。そこには、戦略の立案とギアいじりへの純粋な楽しみがある。
開幕前日の水曜日に、GolfWRX.comはドライバー3本、4番アイアン2本、パター2本の計18本のクラブを携えたシェンクの姿を写真に収めた。こうした全ての予備クラブも背負うシェンクのキャディ、デビッド・クックは、彼のボスが日々の風向きを含む、複数の要素を鑑みてギアのセットアップを変えていると述べた。週ごとにクラブを変えているのではなく、日ごとにクラブに関する戦略的な判断を行なっているのである。
会話をするなかで、クックはシェンクによるクラブをローテーションする戦略について、特に秀でた逸話を思い出した。
「ジョンディアクラシック」の第3ラウンドを前に、シェンクとクックは風向きとコースセットアップを分析していた。作戦会議が進むなか、クックは全てのパー3が追い風になり、かつピンポジションがいずれも手前であったことから、高い確率でシェンクが4番か5番アイアンを必要としないであろうことに気付いた。「じゃあ(4番と5番アイアンを)抜こう」とシェンクはクックに言った。「最初はジョークなのかと思った」とクック。
土曜の午後のラウンドは、おおむね彼らにとって順調なものとなったが、それもピンが奥に切られた9番、強い向かい風のなかピンまで210ydの2打目地点に立つまでのことだった。「ここはどう考える?」とシェンクは苦境に立たされたクックに聞いた。その時クックは「そうだね、唯一のオプションは6番(あるいは3番アイアン)だね」と答え、「あの時、僕らはかなり笑ったね」と述べた。
最終的にシェンクは6番アイアンで強めのドローを打ち、ピン手前30フィート(約9.1m)につけて2パットのパーで上がった。彼はその後、4位タイで大会を終えたが、これは今季6度あったトップ10入りの1つとなった。
その根拠は何であれ、シェンクは「ツアー選手権」へと辿り着き、フェデックスカップ制覇のチャンスを手にした。時が経つなかで彼の戦略が機能することを証明し、それを楽しみにながらやっているのである。それに、そのおかげで、風に向かって210yd手前から6番アイアンで強めのドローを打てることも発見したのだ。そこはしっかり覚えておくべきだろう。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)