時を超えて勝利をもたらしたハリス・イングリッシュ愛用パター
最新、あるいは最高のゴルフ用具には何かと惑わされがちだが、本当にギアマニアの興味をそそるのは長年バッグに収まり続けているクラブである。好例として頭に浮かぶのは、タイガー・ウッズのスコッティキャメロン、フレッド・カプルスの四角い3番ウッド、ジャスティン・トーマスの5番ウッド、そしてヘンリック・ステンソンの3番ウッドなど。ベルンハルト・ランガーともなると、基本的にバッグの中身すべてが特別なクラブとなっている。こうしたクラブには、語られるべきストーリーがあるのだ。
PGAツアーの選手たちは誰よりも、機能するクラブに忠実であり続ける。そんな彼らを責めることはできない。何しろ暮らしがかかっているのだから。実際、このことについてよくよく考えてみれば、彼らがシーズン毎にクラブをアップデートしていることの方が驚きである。
ウッズの“エルダーワンド”(スコッティキャメロン ニューポート2 GSS)を見ても分かるように、信頼のおける古い相棒も、時として炎を点火し直すべく一時的な休息を必要とすることもあるが、こうしたクラブは常に再びバッグの中に返り咲くのである。
ハリス・イングリッシュは今年初めに勝利した「セントリートーナメントofチャンピオンズ」で、これに似たストーリーを提供してくれた。彼がカパルアで優勝を遂げた際に使用した風変わりなピンのパターは、2013年に「マヤコバゴルフクラシック」を制覇した際に使用したパターと同じだったのである。このピンの「スコッツデールパター ホーハム」を使い始めたのはジョージア大学4年生のときだったという。
「僕のアシスタントコーチが練習グリーンでこれを使った際、彼は『俺はなんてひどいパターの使い手なんだ。もし自分がこのパターでパットを決めることができるのだったら、誰でもこれでパットを決めることができるぞ』というようなことを言ったんだ」とイングリッシュ。「その時以来、これは僕にとって常に戻ってくる必需品になっている。フェースが何とも言えなんだ。とても柔らかいんだよ。唯一無二で、狙いを定めるのが簡単。僕がこのパターに戻って来るのには、理由があるんだ。信頼できる古い相棒みたいなパターで、これまで最高のパッティングをした週は、いつだってこのパターを使用してきたんだ」
このホーハムは、“ベンチ要員”となった期間を経て2020年にバッグに復帰した。
イングリッシュと仕事の上でとても親密な関係を築いているピンのツアーレップ、トニー・セラーノに、この“古き友人”ともいえるパターがいかにイングリッシュの復活優勝の一助となったかを聞いてみた。何しろ、イングリッシュは同大会でのパッティングのストロークゲインドで首位に立ち、プレーオフ1ホール目で1.8mのバーディパットを決めて優勝したのである。
「ハリスはホーハムの(ヘッドの)トップにあるアライメント機能がとても気に入っています」とセラーノ。「ホーハムのトップ表面は高さがあり、微妙にボールの外径のように縁取られたボール幅のアライメント機能が、彼のボールのアライメントを補助しています。さらに、ドュロメーターのインサートが、ハリスのパッティングにピッタリの打感、打音、そして速度を与えます」
「我々は過去に、何種類ものスタイルのパターを試しました。さらに、ハリスからの情報をもとにした特別なパターを設計しましたが、彼はいつもホーハムに戻るんです。以前、ホーハムであまりに多くのクラッチパットを決めてきた記憶があり、それが自信につながっているので、パターを変えるのは難しいとコメントしたことがあります。トーナメント・オブ・チャンピオンズでは、また新たに彼のメモリバンクに、ホーハムでクラッチパットを決めまた記憶が刻み込まれましたね」
イングリッシュ愛用のピン スコッツデールパター ホーハム:仕様
ロフト: 3度
ライ角: 70度
シャフト: ストレートアーク
長さ: 36 1/4インチ
グリップ: ピンAVSミッドサイズ
(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)