2020年ギアに関する4大ストーリー(前編)
2019-20年シーズンはPGAツアーにとって、未曾有のシーズンとなった。しかしながら、我々は最終週まで漕ぎ着けた。全ては今週、アトランタのイーストレイクGCで決し、月曜(7日)にはFedExカップ王者が誕生した。
では、2019-20シーズンで最も大きな話題となったギアに関するストーリーを振り返ってみよう。
今季はギア好きにとって、思わず前のめりになるストーリーが多々あり、ツアー中断期間中も話は尽きなかったほどである。それが、このゲームの良いところ。全ての出来事は必ずしもコース上で起こっているわけではなく、多くの場合、商売道具自体が話の種となるのである。
今季のPGAツアーを賑わせたストーリーのベスト4(前編)は以下の通り。
1.テーラーメイドSIMが猛威を振るう(現在も進行中)
1月はギア業界では新作の季節。各メーカーは、店頭に並ぶことになるメタルウッドを披露するのだが、客観的に見て、この1本は市場における過去最強のドライバーの1つであることに間違いないだろう。
毎年、他を抜きん出たドライバーが1つや2つは登場するものである。2017年は、ピンG400がそれだった。その翌年は、コブラF9がコブラゴルフの復権に一役買った。2019年は、テーラーメイドM5とピンG410の飛ばし合いとなった。そして、2020年には、テーラーメイドSIMという、“最強”かつ“最長”にして“一番人気”という至高の一本があった。
SIMは当初、不安を感じさせる向きがあった。そのテクノロジーと形状が若干無骨に見えたのである。しかしながら、「セントリートーナメントオブチャンピオンズ」でテーラーメイドの契約選手たちがバッグに入れ始めると、その後はSIMによる一大ショーと化した。
パフォーマンスに的に、このドライバーは全ての項目に合格している。安定しており、初速が速く、寛容性が高い。そして見た目も良い。ツアーでの実績も高く、勝利数も多い。早速これを実戦投入したタイガー・ウッズ、ダスティン・ジョンソン、ロリー・マキロイ、ジョン・ラームに加え、自由契約選手がこぞってこのドライバーを使用し始めたことで、その地位を確固たるものとした。ビッグネームでSIMをバッグに入れているのは、トミー・フリートウッド、パトリック・リード、ポール・ケーシー、ブルックス・ケプカ、ビリー・ホーシェル、ジャスティン・ローズ、ライアン・パーマー、そしてセルヒオ・ガルシアといった面々である。そのうちわずか一人を除いた全員が今もこのドライバーを使い続けている。驚異的といってもいいくらいだ。
SIMはシーズン再開後の14大会中、その半数で勝利を挙げており、FedExカップでトップ5入りしている選手のうち3人が使用している。
なぜこれほどまでの成功を収めることができたのか?パフォーマンスはその理由の1つであるが、このドライバーを瞬く間に世に知らしめた#tourtrucktuesday、クリス・トロット、そして有名スタッフによるテーラーメイドの上手なマーケティングも称賛されるべきであろう。
2.ボーケイウェッジによる席巻再び
1997年にタイトリストが評価の高いクラブメーカーであるボブ・ボーケイを招聘したとき、同社が現在の状況を見越していたかどうかは分からない。当時、ツアーではクリーブランドとピンがウェッジのシェアで覇権を競い合っており、その他大勢との差は歴然としていた。
実際のところ、支配的勢力となるまでの道程はかなり興味深い。
1998年、ツアーにおけるボーケイの使用率は16%で、使用率は全体の3位だった。
1999年から2003年にかけて、同ウェッジの使用率は2位となり、1/4強(27%)の選手たちが使用していた。
それ以降、ボーケイはツアー使用率ナンバーワンウェッジの座を17年連続でキープしている。そして、ボーケイは2020年にさらなる金字塔を打ち立てた。ツアーで初めて同ウェッジを使用する選手が半数を超えたのである。
ボーケイの成功には、多くの要素が貢献している。外見、打感、そしてパフォーマンスは偉大なるクラブの必須条項だが、最大の要因は信頼とシンプルさということになるだろう。メジャーなツアーでプレーする選手たちは、誰もがクラブその物もさることながら、ボーケイと、そのボーケイからバトンを渡されたアーロン・ディルを信頼しているのである。
「まず話を聞いてから、喋る」という彼らのアプローチは、選手から連絡を受ける上で最重要である。そこで収集した情報を基に、シンプルながらハイパフォーマンスのウェッジを、車輪の再発明をすることなく(同じ物を一から作り直す手間を省きながら)設計する手法は、成功のレシピである。
クラブが自由契約となった選手の動向をたどってみると、大概は即座にボーケイウェッジをバッグに入れている。自由契約選手でSIMを使用する選手のリストを覚えているだろうか?あのリストの全選手は揃って少なくとも1本はボーケイウェッジを使用しており、選手によってはウェッジの全番手をボーケイで揃えている。
「ツアー選手権」では、35本以上のボーケイウェッジが実戦投入されており、その使用率は30%以上に及ぶ。今週もボーケイが後続に大きな差を広げ、使用率ナンバーワンとなっている。
(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)