PGATOURライターズ厳選・2014年ハイライト(5)生還に関する2つのストーリー
By Helen Ross, PGATOUR.COM
2014年を振り返るとき、2つの生還に関するストーリーが私について回る。
一つは、この世に生を授かるや否や発作に見舞われた小さな赤ん坊の話。もう一つは、子育て中の男性が2度目となる白血病との闘病を強いられた話。
2人は生還し、幸いにも私は彼らの話をすることができる。イザイア・テソリとジャロッド・ライルは私の知りうる限り、この世で最も心を揺さぶる2人の人間だ。
もちろん、イザイアにはそのことはまだ分からない。柔肌の彼は、うれしそうにごろごろとのどを鳴らし、ほほえむ。彼が1歳の誕生日を祝うのは、来年1月だ。
ただ、心配が続いた生後数カ月間、イザイアの両親であるミッシェルとポールには、自分たちの第一子に何が起きているのか知るあてもなかった。医師は、赤ん坊が別の病院で特別なケアを受ける必要があると告げた。
フロリダ州ジャクソンビルのウルフソン小児病院の新生児用集中治療室へと搬送した救急医療技師らでさえ、両親とともに祈るほかなかった。ミッシェルは保育器の中に手を差し入れ、赤ん坊をさすった。生きた彼と再会できるかどうか分からないままに。
ただ一つ、医師たちに分かっていたのは、検査の結果、イザイアがダウン症の数値を示したということだ。
「神様にはびっくりするような思し召しがあるのね」とミッシェルは言った。「もしその情報だけがもたらされたとしたら、多くの人には痛烈なことかもしれない。でも私たちにとっては、それがどうしたの、という感じだったの。OK、問題ない。そんなのへっちゃらよ、てね」。
2人は、ウェブ・シンプソンのキャディを務めるポールの職場であるPGAツアーの選手やその妻たちの支援もあって、この難局を乗り切った。ポールとミッシェルは、チーム・イザイアとして新生児用集中治療室で長時間にわたり任務に就く看護師に食料やメッセージを届け、また愛する我が子を我が家へ連れて帰るのを心待ちにするほかの家族に聖書や祈りの本を贈ることで、この恩に報いている。
赤ん坊はライルの話でも重要な役割を果たしている。
PGAツアーのベテラン選手であるライルは、第一子の出産に立ち会うため、2012年3月にオーストラリアへ帰国した。しかし、彼は気分が優れなかったため、帰国するとすぐに医師の診察を受けたが、診察結果は余りに過酷な知らせとなった。
10代の頃に患った白血病が再発したのだ。
担当医は直ちに化学療法に移行することを望んだが、ライルは少し待ってもらうよう説得し、妻のブリオニーは人工的に陣痛を起こして出産する許可を担当の産科医から取り付けた。こうして、二人はそろってルーシーを家族の一員として迎えた。ライルは娘の入浴や着替えをすることも叶い、その後、治療を始めるためメルボルンに向かった。
「持ちこたえるため、何か支えを必要としていたんだ」とライル。
結局、ライルは5カ月近く入院した。1回目の化学療法は成果が出ず、骨髄のドナーも得られなかった。そのため、医師は、ドイツの乳幼児から1度目の提供を受け、2度目は米国の少女から提供を受ける形で、2度にわたる臍帯血液移植を試みた。
ライルは今なら、女性の染色体を生成しながらも立ったまま用を足すことができる、と冗談めかして語るだろう。重要なのは移植が成功したことだ。
昨年の今頃、ライルは競技への復帰を果たし「豪州マスターズ」では予選を通過した。今夏、彼はWeb.comツアーの4大会に出場し、一試合目では11位タイに入っている。
10月にはPGAツアーに復帰し、出場した2大会で予選を通過した。今後、20大会に出場して賞金28万3825ドルを稼ぐチャンスを手にし、ツアーのシード権も維持した。
ライルを甘く見積もってはいけない。何しろ、既にもっと不利なオッズを覆してみせたのだから。