全米プロゴルフ選手権「バルハラ」の事前情報
今シーズンのメジャー最終戦となる「全米プロゴルフ選手権」がケンタッキー州のバルハラGCに帰ってきた。バルハラとは北欧ノルウェーの神話において主神オーディンが建てたとされる戦死者の館で、勇敢な死を遂げたバイキングの魂がオーディンとの宴席に就く場所という言い伝えがある。ここバルハラではゴルフ史に残る大会が開催され、偉大な王者達も生まれた。ジャック・ニクラスが設計した同コースでは、過去に2度の「全米プロゴルフ選手権」、2度の「全米プロシニアゴルフ選手権」、そして「ライダーカップ」が開催された。
今週の大会に出場する156選手にとって立ちはだかるバルハラだが、勝利の宴を楽しむには次のポイントに注意し、準備する必要がある。
ラグ・パッティング
他のコースと異なる特徴でもある2段グリーン。ショットの飛距離と精確性が伴わなければ、多くのグリーンがトリッキーなものに豹変する。程度の差こそあれ、難易度の高いロングパットが求められるだろう。3パットを避けるためにも、選手は約9メートルから15メートル強のパットの練習に重点を置くべきだ。
そして切れるパット対策も忘れてはならない。大事なのはパットのラインを完璧に読むこと。そしてハイレベルなコンタクトとスピードコントロールも重要。距離が長く切れるパットをカップまで数センチのところに寄せられれば、1メートルから2メートルの距離からのパーパットというストレスを減らすことが出来る。
飛距離のコントロールとアプローチプレー
前述した2段グリーン対策には、適切なアイアン選びと正確なアプローチショットが必要で、カップと同じグリーン面に乗せることが重要。要するに、ヤーデージ通りの正確なショットが求められるということ。飛距離のコントロールに大きな影響を与えるショット時の基本を見直すべきだろう。グリップ、クラブフェースで狙いを定め、アラインメント、ボールポジションに気を配り、整えるべき。スイングアークのベースとなる身体の軸を安定させるため、理論に裏付けされたアイアン練習に時間を割くべき。
バンカー対策
バルハラのグリーンサイドには深いバンカーが多く、どれもグリーン面の真下に位置している。そのため、急角度のバンカーに対応するサンドショットの練習が重要。安定して実行するには、フェース角がオープンなクラブでインパクトの瞬間に正しいアークで打つこと、そしてリリース時に砂を深く捕え過ぎないこと。これらのことを練習しておくべきだろう。
ドライバー対策
良いドライバーショット、ウェッジプレー、そして優れたパッティングこそ良いプレーを生む条件だ。「マスターズ」を除く多くのメジャーでは、生い茂ったラフとミスショットが選手を苦しめる。バルハラには自生のフェスキューが生え、ティショットのミスを待ち構えているが、ドライバーの正確性はさほど大きな問題にはならない。
とは言え、ケンタッキーの夏は暑く、高温からベント草を守る為、他の大会と比べてオフィシャルは幾分か大目に水分を与えなければならない。つまり、フェアウェイからグリーンを狙える選手の方がアグレッシブにプレー出来るというわけだ。あえて言うならば、フェアウェイをキープ出来る選手がロースコアを記録する可能性が高い。フェアウェイを外したとしてもスコアを伸ばせるだろうが、距離が長く正確なドライバーショットは強みになるはず。練習ではドライバーの正確性に重点を置くことを奨めたい。
今回の「全米プロゴルフ選手権」に求められる基準は極めて高いレベルになると予想される。コースコンディションの他、高温多湿という気象条件もロースコアを生む絶好な条件とは言い難い。適切な休養と水分補給は必須。体力を温存するためにも、練習は時間より質を重視すべきで、休養と回復こそ、プレッシャーのかかるハイレベルな大会で4日間を戦い抜く上で何よりも重要となるだろう。