首位に4打差で決勝へ 夢の実現に1歩前進のスピース
ジョーダン・スピースが2014年に掲げた目標の1つは、メジャー大会での優勝争いに絡み、それがどういうものなのか実体験すること。「その上で、大仕事をやってのけられるかどうか。それから大舞台で何かを学べるかどうか」。20歳の超新星は間髪入れずにそう言った。
今週のリストから、その目標が外れるにはまだ早い。「本当の争いは最終日のバックナイン」と、類稀な才能に恵まれたテキサス出身のスピースも気を引き締めてはいるが、2日目を「70」で終え、首位に浮上したバッバ・ワトソンとは4打差の通算3アンダー。第78回「マスターズ」で上位争いを見事に演じている。
18番で50センチ弱のバーディパットを沈めて2日目を終えたスピースは、トーナメントの前半戦を終えてディフェンディング王者のアダム・スコットのほか、トーマス・ビヨーン、ヨナス・ブリクストと3位タイで並んだ。明日はオーストラリア出身として大会史上初めて優勝したスコットと、最終組から3番目の組で午後2時25分(米国東部時間)にティオフする。
スピースは、大会史上に残る記録樹立を狙える立場にいる。タイガー・ウッズが残した大会史上最年少優勝記録更新に加え、35年ぶりにグリーンジャケットに袖を通す初出場者となる可能性を秘めている。なおこの日は15番でイーグルを奪い、既にクリスタル製のペアゴブレットは手にした。
「まだ36ホールを終えたばかりだし、優勝争いはまだまだ先の話。折り返し地点だからね。ただ、優勝争いに絡む可能性があるポジションにいる。どこまでやれるか、やってみるよ」。
もし2日目のラウンド前に「70」で終えると告げられたとしても「喜んで署名する」と語ったスピース。土曜日は精神面での戦いになると予想している。もう何年も前、幼いながらもゴルフを真剣にプレーし始めた時から何度となく夢見ていたメジャー優勝。スピースにとっても「マスターズ」優勝は、それくらい大きな目標なのだ。
「(ベン・)クレンショーが名言を残している。『マスターズ』とは、感情に左右されない選手でも感情を露にしてしまう、とね」。「自分はもう感情的になってしまっているから、冷静に、落ち着いてプレーしないといけない。キャディが冷静になるよう上手く自分をコントロールしてくれている。『考えられるワーストなスコアはボギー』という意識を植え付けてくれているんだ」。
今週月曜日には「マスターズ」を2度制しているクレンショーとの練習ラウンドを希望していたスピースだったが、大自然の思惑は違った。大雨と雷の影響でコースは閉鎖。翌日には「全米オープン」優勝のルーカス・グローバーと18ホール回った。それ以外にも、大会前のコース視察として練習ラウンドを6回こなしてきた。
「初めてプレーするコースでは珍しいんだけれど」と口を開いたスピースは、「本来なら大会前に2ラウンドをプレーする。そうすることで多少なりとも経験を積んだと感じられるから。これは1年を通じてやっていること。良い形で大会に入れるからね」と語る。
それだけスピースは、オーガスタナショナルでは“経験”が重要であると理解している。しかしながら、1979年にファジー・ゼラーが成し遂げた「マスターズ」初出場初優勝という快挙の再現に燃えているのも確かなことだ。
「良いプレーが出来ていて、正しくグリーンを読めれば、初出場だろうと、50回目の出場だろうと関係ない。優勝出来るよ。フレディ(カプルス)の様に1度もトップ20から外れたことがない選手でも、新人でも、自分のゲームが出来ていて、コース攻略の自信があれば、出場回数や経験の差なんて考えないと思う」。
昨年は出場権を持たずにPGAツアーに参加したにも関わらず、スピースは2013年のPGAツアー新人王に輝いた。弱冠19歳で「ジョンディアクラシック」を優勝すると、フェデックスカッププレーオフ出場権をも手にし、「ザ・ツアー選手権 presented by コカ・コーラ」にも出場。そしてカプルスの指名を受け「プレジデンツカップ」の米国代表にも選出された。
つまり、スピースが「マスターズ」のプレッシャーに慄くとは考えにくい。
「今大会に出場しているレベルの選手、それに今大会に匹敵する舞台で何度も戦ってきたからね。世界ゴルフ選手権や、他のメジャー大会にも出場した。自分のゲームが出来て、メンタル面をコントロール出来れば、優勝争いに絡めると思う」。「これが今の自分が置かれているところだし、まだまだやることは多い。折り返し地点だから。ただ、ここまでのプレーには満足しているよ」