オーガスタを襲った雪嵐でアイゼンハワーツリーが伐採される
オーガスタナショナルの代名詞であり、かつての現職米国大統領ですら切り倒せなかった17番ホールのアイゼンハワーツリーが、雪嵐でひどく損傷したために今週末に伐採された。
オーガスタナショナルGC会長のビリー・ペイン氏は、「アイゼンハワーツリーを失ったことは受け入れ難いニュースです。対応可能な最高の樹木医の意見を聞きましたが、残念ながら回復は不可能だと宣告されました」とコメントした。
「マスターズ」開催を2ヶ月後に控えているが、ペイン氏はそれ以外でコースに大きな被害は無いと話す。
アイゼンハワーツリーはテーダ松と呼ばれる種類で、17番フェアウェイの左サイド、ティから約210ヤード地点にそびえ立ち、ゴルフ界で最も有名な巨木の1つだった。プレーヤーは遠く木を避けるか、もしくは右から左にボールを曲げてかわすことを強いられていた。
中でも散々な目に遭い続けたのは、オーガスタナショナルのメンバーであり、結果的にその木の名前にまでなった元米国大統領のドワイト・D・アイゼンハワーだ。
1948年から氏が亡くなった1969年までオーガスタナショナルのメンバーだったアイゼンハワーは、ティショットでこの巨木に幾度となくボールを当てたため、この木を動かすべきだとの運動をし、オーガスタナショナルの管理委員会では切り倒すべきだと提案したと言われている。これは1956年のことで、当時アイク(アイゼンハワーの愛称)は大統領としての2期目を迎えていた。しかし、当時のクラブ会長であり、共同設立者だったクリフォード・ロバーツは、大統領の提案を却下し、委員会を締めくくった。
それ以来、この巨木はアイゼンハワーツリーと呼ばれるようになった。
選手たちはこの歴史を好意的に受け入れているものの、幾人かにとっては約20メートルの高さを誇る樹齢100年の老松が大好きだったとは言い難い。
「あの木が邪魔だったかって?」日曜日、2度の全米オープン覇者であるカーティス・ストレンジはコメントした。「やつは私にとっては3塁を守るジョージ・ブレット(MLBの名プレーヤー)のような存在だったよ。鋭いライナー性の当たりをしても、捕られることの方が多かった。でも気持ちを傷つけられることはなかったね」
グリーンジャケット獲得に4度のチャンスを掴んだデビット・デュバルは、ティショットでフェードボールを打っていたため、アイゼンハワーツリーを意識せざるを得なかった。彼は日曜夜のニュースで、驚きを隠せないことをコメントした。
「冗談だろ?それはひどい」とデュバル。「あの木はどこにティショットを打つべきか本当に神経を使わせる。とても狭い範囲で打っていかないといけないんだ。木を越えて上を行くか、球を曲げてかわさないといけないんだ」。
デュバルはゴルフ場でひときわ注目を集めていた木は、ペブルビーチの18番グリーン手前に元々あった木だけだと考えていた。だが、その木は移植されたので、オーガスタナショナルも同じことを出来るのではないか、という憶測がある。
クラブは基本的にはやりたい改造はなんでもできる――アイクの木を守るという今回のケースを除いては。
先週の雪嵐で、巨木は主要な大枝の多くを失った。地元新聞・オーガスタクロニクルの写真には、左側に大きく空いた穴が写っていた。ここ数年、クラブは松をひとつにつなぎ止めるためにケーブルを使っていた。
「今後の17番ホールの未来についての議論を始めました。また、我々の歴史に残るアイコン的存在だったアイゼンハワーツリーの貢献を称える方法を検討しています。どちらの対応も適切に、確実に実行します」とペイン氏は語った。
トミー・アーロンはかつて、この木の中で球を無くしたことがある。ここ最近では、11年のマスターズで大きくクローズアップされた。タイガー・ウッズがアイクの木の下の松葉から打とうとした際、ひどいスタンスだったためにスイング中に左膝とアキレス腱を痛めたのだ。ウッズはその年の2つのメジャーを欠場に追い込まれた。
球をどちらにでも自分が好きなだけ曲げることの出来るバッバ・ワトソンは、この木を問題にしたことは一度もなかった。
「正直に言おう。あの木を邪魔に感じたことは一度もない」と日曜日のリビエラでワトソンは語った。「彼らがどうしようとしているのかは分からない。僕に聞くこともない。でも、多分そこに別のなにかを植えるんじゃないかな」。
ペイン氏によれば、アイゼンハワーツリー以外で雪嵐による大きなダメージは無いとのことで、既にメンバーがプレー出来る状態だという。また、4月10日から開幕する「マスターズ」の準備に何の影響も無いと話した。
選手たちは一般的に、今後数週間に渡って練習ラウンドをこなすためオーガスタナショナルに通い始める。