“落とし物を拾う”小平智「ゼロから組み立てる」
◇米国男子◇CIMBクラシック 2日目(12日)◇TPCクアラルンプール(マレーシア)◇7005yd(パー72)
口を結んでホールアウトした小平智はその約2時間後、ドライビングレンジでようやく笑顔になった。5バーディ、1ボギーの「68」をマークし、通算5アンダー。順位を49位タイから36位タイに浮上させたが、2018―19年シーズンの自身最初のゲームは“試合勘”を取り戻すための絶好の機会と決めている。
初日同様、序盤はこの日もパーが並んだ。前半5番(パー5)、フェアウェイからアイアンでの第2打がグリーンに着弾してから右サイドの池に転がり落ち、チャンスを逃してしまう。「完ぺきなショットを打ったけれど、池に入った。パーで良かったけれど…」。それでも、少々気落ちして迎えた7番で4mを沈めてバーディ、9番で2つ目を決めた。
「いつかパターが入ってくれればと思っていた。ボギーを打たないようにしようと心がけてやっていた」。4つのパー5でスコアを伸ばせなかったが、後半15番(パー3)ではグリーンの段を下る約20mを残しながら、きっちり2パットパー。終盤17番で5mのバーディパットを沈めた。
今週はスイングのフィニッシュで、体勢を崩しながら右肩を大きく巻き込むような仕草が散見される。「悪いなりにごまかしながらやっている」と語る状態のひとつの“サイン”でもある。ラウンド後は居残り練習に励んだ。アイアンを中心に打ち込み、ボールを右足で踏みながらスイングしたり、スマートフォンで撮影した動画を繰り返し見たりするうちに、次第に納得めいた顔になった。
「いまは“落とし物”をひとつずつ拾っていっている感じ」と表現する。8月末のプレーオフ第2戦「デルテクノロジーズ選手権」で昨シーズンを終えてから、クラブを極力握らない時間を作った。疲労が蓄積した終盤戦にスイングを崩していることにも気づいていた。
「感覚を一回なくすために、練習しないでトレーニングもしないでいた。(疲れているうちに)無理にやるとそれで(スイングが)固まってしまう。まったく芯に当たらないところからやると、悪いところが見えてくる。今はゼロになって、そこから組み立てている感じ。コースで失っていた感覚を拾っていっている」
この日は「軸がぶれていた分、球も芯に当たっていなかった」ことに気づいた。「でも、取り組みが固まるまで、無意識で出来るまでには時間がかかる。良いものが見つかってきたけれど、すぐには期待せず、時間をかけてやっていきたい」と自分を焦らせない。いつの間にか、分厚い雲に上空を覆われた打席周りには、他の選手はいなかった。「練習は好きなので。やった分だけ、いいものが見つかる。(課題が見つかる)いまはメチャクチャ楽しい」と残し、雷鳴とともにコースを後にした。(マレーシア・クアラルンプール/桂川洋一)