スーパーイーグル!宮里優作 はヒメネスさんダンス
ペンシルベニア州のオークモントCCで開催中の「全米オープン」3日目。大会初出場の宮里優作が、決勝ラウンドで上位進出を見据えた。連日の順延で持ち越された第2ラウンドを「69」(パー70)とし、通算2オーバーで予選を通過。引き続き行われた第3ラウンドは「71」で、1日36ホールを回り2オーバー暫定21位タイにつけた。
これほどの忍耐力を、宮里は持っていた。第2ラウンドはショットに不安を抱えたままスタートしたが、前半インで3m以内のパーパットを立て続けに決めた。序盤7ホールでパーオンに成功したのは1回だけ。しかし、耐え抜いた末に迎えた折り返しの18番で、スーパーショットが生まれた。
右セミラフから上りを含めて残り188yd、6Iで放った持ち球のフェードボール。「良い方向に飛んでいったので、しっかり止まってほしかった。打った瞬間はすごく良かった」。右サイドのピンに対し、ボールは左からの下り傾斜に落ちた後、カップの左側から吸い込まれた。起死回生のイーグルは、メジャートーナメントの大歓声で分かった。
その場で見せたのは、刀に見立てたアイアンを鞘に収め、両手を回して後ずさりするダンス。“心の師匠”へのリスペクトだった。ワインと葉巻がトレードマークのミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペイン)が披露する踊りを、即興で真似た。宮里は日本ツアーで屈指の葉巻好きで知られている。遠征にはシガーキャディ(葉巻を保管する箱)を携え、シガーバーを愛する選手会長の憧れだ。
テンションはアガり切ったが、その後の冷静さが決勝ラウンド進出につながった。2打目をグリーン奥にこぼした3番では、SWで上りのアプローチを見事に寄せてパーセーブ。「日替わりになってしまう」というティショットをショートゲームでカバーした。直後に行われた第3ラウンドも我慢、我慢。ピンポジションが変わり、幾分攻めやすくなったが、3バーディ、4ボギー。「いつから谷口徹、平塚哲二になったのか…」と小技の名手の先輩プロの名を挙げて自賛した。
1日で36ホールを回り、スコアは伸ばせなかったが、落とさなかった。5月に同じく1日36ホールで争われた日本地区最終予選会を通過して、この舞台に来た。精神的な疲労感は「全然違う」と笑った。「体力的には連戦もあって日本の方がきつかった。こっちは頭が疲れる」。今大会前に4日行った事前ラウンドは、1日9ホールと決めていた。「コースで覚えることが多すぎて、18ホールやると惰性になってしまうから」。詰め込みすぎは、ペースを乱す。最高難度のコースで、メンタル面のマネジメントが光った。
残すところ18ホール。トップ10に入れば、次回大会の出場権を得られる。世界ランク浮上は、夏場の「全米プロゴルフ選手権」や「リオデジャネイロ五輪」出場にもつながっていく。「ここでやれていることが楽しい」と初めて立った大会の空気を満喫中だ。あす6月19日(日)は自身の36回目の誕生日、そして妹・藍の31歳の誕生日でもある。「父の日でもありますから。いいプレゼントになれば」。ロープ脇から、父・優さんの納得する声を何度でも響かせたい。(ペンシルベニア州オークモント/桂川洋一)