激闘マスターズからの復帰戦 松山英樹が誓う底上げ
サンデーアフタヌーンに堂々の優勝争いを演じた松山英樹の5度目の「マスターズ」。2年連続のトップ10入りで、周囲は、日本人初のメジャー制覇の可能性を十分に感じ、いっそうの期待をふくらませているかもしれない。しかし本人の胸の内は少し違う。時間が経ってなお、胸にある悔しさは増幅するばかりだ。
5日(木)に開幕する米国男子ツアー「ウェルズファーゴ選手権」は、オーガスタでの戦い以来4週ぶりの出場試合。オフの間に一時帰国した際、松山は多くの人からねぎらいの言葉をかけられるたびに、涙が出そうな思いに駆られたという。
「『頑張ったね』と言っていただけたんですけど…余計に悔しくなるところもありました。つらい状況にいる人が、優しい言葉をかけられて、余計つらい気持ちになる感じですかね…」
上位で4日間を戦ったが、内容は連日、満足いくものではなかった。出来は松山の期待を裏切るものだった。「あんなに大事なところで悪くなって…。なんとなく良い状態、『オレ、できるかも』って思える状態で(試合に)入った。それなのに、あのボロボロ具合だった」。開幕前の状態をキープできなかった自分、「できる」と力が本番で表現できなかった自分に、苛立ちが募った。
わずかな充電期間を経て、リスタートする松山は悲願達成へのパフォーマンスの“底上げ”を誓う。「技術的にも精神的にも、経験も。全部、もっと」。たとえ調子が崩れてもメジャーで勝てる、小手先でない実力を蓄えるまでだ。
復帰戦となる今週はさっそく新しいクラブを持ち込んだ。ダンロップスポーツの今夏にかけての新ラインアップと見られ、すでに国内ツアーでも使用プロがいる「スリクソン Z765 アイアン」。愛用していたマッスルバックタイプの「Z945」から、ソールも厚いハーフキャビティモデル(4番~PW)に替えて試合前の調整を行った。
予選2日間を一緒に回るロリー・マキロイ(北アイルランド)、リッキー・ファウラーと同世代のスーパースター対決を素直に「楽しみ」という。「彼らのすごさ?“人気”じゃないですか。いつも人が多い中で、普通にやっているのがカッコいい。(ギャラリーが増えると)自分はまだ『おっ』となるところがあるでしょう」
最高峰の争いで極限状態を経験したからこそ分かる弱点がある。「ここから大きな大会がたくさんある。優勝を目指しているし、それに順ずる内容が必要。まずは内容を」。松山英樹は激闘を経て、いっそう謙虚だった。(ノースカロライナ州シャーロット/桂川洋一)