3日間ただ一人オーバーパーなし 松山「最後は悪いのが出たけれど」
世界の名手89人が結集した今年の「マスターズ」3日目を終え、一度もオーバーパーを叩いていない選手がただ1人だけ存在する。松山英樹だ。
初日から「71」「72」「72」と堅実にスコアを作り、首位のジョーダン・スピースと2打差の3位で、日曜日の朝を迎える。
「悪いなりにまとめていた」。この日のラウンドをそう振り返った松山は「最後の3ホールで悪いのが出ちゃったけど」と、苦笑した。
ボギーが先行した予選2日間と違い、この日はバーディを先に並べた。2番(パー5)はティショットを左に曲げたが、松葉の上から、右からの風も利用して30yd近く曲がるフックを掛けてグリーンをとらえると、2パットのバーディ。
8番(パー5)も2オン2パットのバーディ。14番では“触るだけ”の下り8mのバーディパットが、傾斜で加速しながらカップの向こうに当たって沈み、右手拳を握りしめた。
「びっくりしました。入ってなかったら、10m以上行っているかなという印象」。直前の12番(パー3)では、ティショットがレイズクリークに向けて落ち込む斜面の少し先に止まり、パーを拾った。オーガスタの女神が時折、微笑みかけているようだ。
通算3アンダーとして、この時点で一時首位タイに浮上した。直後にスピースが12番でバーディを決めたため、ほんのわずかの時間だったが。
向かい風が弱まった15番(パー5)では、今週初めて2オンを狙った。3Wで奧のカラーへと運んだが、16ydのイーグルトライは「難しさに緊張した」と、返しの1.5mも外してパーとした。今週初めて見せた、ミスパットらしいミスパットだった。
続く16番(パー3)も上り1.5mのパーパットを左に外し、17番はラフからの2打目がグリーンを大きくオーバーして連続ボギー。だが「トップとの差で緊張したわけではない」と松山はさらりと言った。優勝争いの空気感?「ではないです」。
この1年間、最も取り組んできたというパッティング。「今年に入って良い形になってきたと思ったけど、15番からはひどかった。明日までに修正したい」。やるべきことは分かっている――。その言葉には迷いも不安も感じられなかった。
「4打差は大きいけど、このコースではあってないようなもの。僕が初めて出たマスターズ(2011年)のときも、ロリー(マキロイ)が4打差で出てああいうこと(「79」を叩き15位)になった。ああいうこともあるし、なかったとしても自分が伸ばせばチャンスはある。しっかりと明日までに修正したい」
ホールアウト後にそう語っていたが、最終組で回るスピースが18番でダブルボギーを叩いて、その差は2打に縮まった。
テレビインタビューから記者会見、さらに日本人記者たちによる囲み取材と、長いメディア対応を終えた松山は、オーガスタナショナルのメンバーが運転するカートに乗り込むと、ぐったりと背もたれにもたれかかった。
世界最高峰のマスターズ。グリーンジャケットは近づいたのか。松山は「優勝争いなので平常心は難しくなると思うけど、少しでも落ち着いてやれたらいい」と語った。大丈夫、背中には大勢の日本のファンたちもついている。(ジョージア州オーガスタ/今岡涼太)