昨年覇者 泣き虫バッバ、また泣いた
2013年「マスターズ」開幕を前に、ディフェンディングチャンピオンが涙した。昨年、ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)とのプレーオフを制し、初のメジャー制覇を遂げたバッバ・ワトソン。9日(火)の公式会見は誰にとっても思いがけないものとなった。
インタビューの序盤、開始から5分が経過しようかというところ。昨年大会を振り返りえるバッバが突然言葉を詰まらせた。
会見で隣に座っていたマスターズ委員会のロブ・ジョンストン氏に目をやりながら、勝利を決めた最終日の夕方を回想。「去年、彼が10番グリーンからバトラーキャビン(優勝者のテレビインタビューが行われる部屋)まで運転してくれているときに、『これ、僕のグリーンジャケットですか?』って聞いたんだ。そうしたら『ああそうだよ。きみのジャケットだ。家に持って帰れるんだよ』って・・・。『家に帰ったら(息子の)カレブに着せます』って言ったんだ・・・」。震える声でそう話すと、両目を手で覆い、涙が頬を伝う。
「一番面白かったグリーンジャケットでのエピソードは?」といった質問にも「最高のクラブ、最高のトーナメントであるオーガスタナショナルへの敬意、名誉があるから、僕がいつもやっているような“おふざけ”は、できなかったんだ」と、感情をあらわに。「たった1つやったのが、カレブに着せることだった」。
そして懸命に涙をふき、声の調子を整えて「今日の記者会見はおしまい」と笑いを誘った。
前週の日曜日には練習ラウンドで、アンジー夫人とともにコースを歩いたレフティ。昨年、プレーオフ2ホール目の10番で見せた、右の林からグリーンを捕えたフックボールは、マスターズの歴史でも名シーンとなった。
同大会から1年、勝利がない期間が続いているが、動じない。「スタッツは明らかに昨年の方が良い。気持ちや身体面、準備も同じだ。良い状態だし、自信もある。でもゴルフはタフなゲームで、予選落ちした直後に勝ったり、勝った後の試合で予選落ちすることもある。誰も僕がどうプレーするかなんて分からない。予選落ちするかもしれないし、優勝するかもしれないんだから。スタッツにとらわれている奴らなら、『バッバは去年みたいには戦えない』って言うだろうけどね」。
5日後に再び、泣きじゃくる姿は見られるだろうか。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)