「欲をかいちゃって…」好調実らず、今田は足踏み
普段はクールな今田竜二も、さすがにこの時ばかりは動揺した。9番のティショット、それまでフェアウェイをキープし続けたドライバーを左に曲げ、「ファー!」の声と共に林の中へ。落下地点に近づいてみると、人だかりの中で小太りの中年男性が頭を抑えて座り込んでいた。
「人に当てて血を見ちゃうと、ちょっと悪い事したなという気になりますよね」。幸い、男性は気も確かで、スタッフの付き添いもあり、にっこり笑って大丈夫という仕草をしたが、それまで完璧なゴルフで2バーディを奪い、ようやくアンダーパーグループに入った今田の流れは、微妙に変わらざるを得なかった。
12番で、ティショットをピン上5mのカラーに止めたが、「これを獲って2アンダーにして、あと2つロングがあるし、2つとも獲れれば上にいけると思い始めたら、3パットしちゃった」と、このホールをボギーとすると、続く13番では、2打目を「池が怖いと思って打ち切れなくて」と、狙いよりも手前に刻んでしまう。「刻みすぎるとスピンが掛かりすぎちゃうので、(グリーンの)3、 4m位の左上のフラットなところに打とうとしたら、もっと前からスピンの掛からない球を打たないといけない」と、このアプローチがピンより下の段についてしまい、連続の3パット。前半の貯金を吐き出し、スタート時の1オーバーへと後退した。
カットライン上で予選通過を果たした今田の3日目は、第1組からのスタート。風も無く、グリーンも軟らかい絶好のコンディションで、今田のゴルフ自体も悪くは無かったが、「今日のコンディションなら、4か5(アンダー)まで行くので、ちょっと欲をかいちゃって…」と、分かっていたはずのオーガスタの罠に陥った。
それでも、初めての「マスターズ」の決勝ラウンドは、楽しみ以外の何物でもない。「今日は本当に肩の荷が下りたというか、予選通過だけでそんなに喜んじゃいけないけど、通れたのが本当に嬉しくて、楽しみながらゴルフ出来た」という今田。「明日も、とにかくティタイムに遅れないようにして、最後まで回ってきたい」と、爽やかな笑顔で締め括った。